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「それならやれると思って」難関国立大学卒、一部上場企業に入社した女性が“処女”を守りながら “SM風俗”で働き続けるワケ

『限界風俗嬢』より #1

2021/08/14
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店を辞めるきっかけ

 ピンサロで働く時間について、同居する母親には塾講師のバイトを続けていると話していた。そんな彼女が店を辞めるきっかけは、「シフトを増やすように強要され、学校の授業と両立できないから」という、極めて単純な理由だった。

 カネ目当ての仕事ではあったが、それで得た収入は、さほど高いものではないアニメキャラのグッズや洋服を購入するくらいで、余った分は貯金していたそうだ。

「一度だけ、30万円くらいかけて全身脱毛をしました。前から毛深いことがコンプレックスだったんで……」

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 ピンサロを辞めた彼女が次のバイトとして選択したのは、またもや風俗の仕事だった。

「ふつうのバイトは時給が安くて働く気にはなれなくて……。それでデリヘルの面接を受けたんですけど、仕事内容を聞くと、“素股”が入るだけでピンサロと変わらない。それならやれると思って働くことにしました」

 “素股”とは、本番行為の体位になり、ローションをつけた手で男性器を握って射精させるプレイである。ただし、デリヘルの仕事というのは、従業員が監視をしているピンサロとは違い、客の男性と密室で二人きりになってしまう。そこでは、客からの本番強要が頻繁にあると聞いている。

「そういうときは『ダメです』って断ってました。何度も言ってくる人には『本当にダメなんですよ』って、強い口調で返してました」

©iStock.com

「処女」にこだわる理由

 ある意味、性行為にこだわりのないカオルが、なぜ処女ということにこだわったのか。その質問に彼女は即答した。

「こんなとこで処女を捨てるのはヤバイと思ってました。好きな人が……できるかどうかわかんないけど、とりあえず今ではないって。やっぱ、入れたくないんですよね……」

 さらにカオルは付け加える。

「私ってそういう場所(風俗)に慣れてない感じがウリになってるじゃないですか。清純派というか……。そのイメージが、1回でも(セックスを)やると、剝がれそうだし……。余分におカネ出すからって人もいましたけど、おカネでは揺るがなかったですね。私のなかでは処女が大切なものっていう認識があるのかな?なんかおカネで売るというのも値段をつけるみたいで抵抗があったんです」

 だが、そんな言葉の反面、「10万って言われたら悩むなあ……でも、自分が納得する人のときに、とっておいたほうがいいかな」と揺れ動く心境も見せた。

【続きを読む】「ああ~辛い、ウ~」交際相手の女性と同じ風俗店で働く処女SM嬢が下した意外すぎる“人生の決断”とは

限界風俗嬢 (集英社ノンフィクション)

小野一光

集英社

2021年8月5日 発売

「それならやれると思って」難関国立大学卒、一部上場企業に入社した女性が“処女”を守りながら “SM風俗”で働き続けるワケ

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