「戦場から風俗まで」をキャッチフレーズに国際紛争、大規模自然災害、殺人事件、風俗業界の取材を行ってきた小野一光氏は、かつて20年以上、毎週1人の割合で風俗嬢のインタビュー取材を続けていた。
性暴力の記憶、毒親、貧困、セックスレス――。それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たちは一体何を語るのか。
ここでは小野氏の新著『限界風俗嬢』(集英社)の一部を抜粋。処女SM嬢を引退し、パパ活を始めた女性・カオルさんの言葉を紹介する。(全5回の4回目/続きを読む)
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条件がなかなか…アプリでのパパ活
「どうやって相手を見つけるの?」
「それがいろいろあるんですよ。事前に調べたんですけど、ツイッター上で募集する人もいるし、あとアプリみたいなのがあって、それで募集したりとか、それこそ登録制のクラブみたいなのもあるんですね。私の場合、最初はアプリでやってみたんですけど、そのときはあまりカラダの関係とかは考えてなくて、お食事だけにしたかったんですよ。で、探してみたんですけど、やっぱりそれだと相手がいない。しかも来るメッセージが、『1回2万でどうですか?』とかで、“安っ!”て感じなんですよ。そういうのばっかりで、アプリはすぐに止めちゃったんです」
「そのときはこっち側は金額とか書くの?」
「そうですね。こっちから提示する場合は、〈こっちはお食事1(万円)で考えてます〉とかって書いたり。でも、それに対してさっきの、2万で本番みたいなメッセージばかり来るんで、〈すいません、ちょっとそれじゃ条件合わないんで〉で、終わり、みたいな」
「食事1万ってのは成立しなかったんだ」
「しなかったです」
交際クラブへ面接に
「それで、どういうふうにやり方を変えていったの?」
「やっぱアプリはダメだなってなって、だけど、それでも風俗で働くのはちょっとって気持ちだったんですね。で、情報サイトを見てたら、交際クラブってのがあったんです。そこに〈いま流行のパパ活で食事1回で1万円〉とかって書いてあって、それが『××クラブ』って名前で、公式サイトをちゃんと作ってあるんですよ。で、質問コーナーに、〈お食事だけで1万円ってホントなんですか?〉ってあって、それに対して〈もちろんそれだけで稼げるわけじゃないですけど――〉ってちゃんと答えてるんですね。だから、まあ1回行ってみようかなって……」
傍で聞いていると〈それだけで稼げるわけじゃない〉との文言は、その先に肉体関係が待っているように思えて仕方ないのだが、一見ちゃんとした回答がなされていることに安心してしまうのだろう。実際、勤め先の風俗店を選ぶときなど、女の子の多くは店のホームページがちゃんとしているところや、電話での店員の対応が丁寧な店を選ぶ傾向がある。つまりはそれが実体を伴わない“見せかけ”であっても、他よりもマシということで、一歩を踏み出す自分を納得させているのだ。
カオルはその『××クラブ』の面接に行ったと話す。