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お部屋に入るんだったら、1回5万円欲しい

 その言葉を聞き、たしか今日の取材を始めてすぐに、カオルが昨日やったパパ活について、「もうヤダァ~って感じになっちゃって」と口にしていた記憶が蘇る。つまりはこれも嫌な思い出の話になるのかと、ある程度の覚悟を決めた。

「昨日は最初からホテルだった?」

「最初からホテルですね。金額は事前にラインでしました。『すみません、お手当ての話なんですけど、ラインでも大丈夫ですか?』って。そうしたら『こんなん大切な話なんで、全然大丈夫だよ』って。それで、『すみません。私はお部屋に入るんだったら、1回5万円欲しいんです』って思い切ったんですね。そしたら、『うーん』みたいな返事がきて、『ま、相場っちゃ相場だけど、けっこう強気な値段だねえ』ってあった後で、『でもなあ、私はいいと思ったものにはおカネはちゃんと払うタチなので、ちゃんと用意しておきます』ってきて、ヨッシャーって思って」

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「で、ホテルに入ったと。どうだった?」

「んー、まあー、ふつうの、優しくなくはないけど、言うほどのことはなかった。フフフフッ、とりあえず、全然大丈夫なレベルだった。ま、あんまり気持ちよくはなかったけど。ンフフフ……」

パパ活はもう止める

「でも、5万はくれたわけでしょ」

「くれました。最初にピッて」

 当初の予想よりはずいぶんとマシな相手である。というか、私がヒドすぎる男性に慣れてしまったというべきか。そこで私は「じゃあ、これからパパ活はどうするの?」と、今後について触れた。

「パパ活ですか?もう止めようと思って」

「え、どうして?」

「なんか、1日だったんですね。昨日。午後1時頃に会ってホテルに行って、午後6時くらいまで部屋にいて、ご飯食べて8時くらいに解散しようって言ってたので、それまでずっと一緒だったんですけど……だけど、エッチが辛くて、辛くて……」

 いきなりその話題に戻り、しかも「全然大丈夫」ではないような口ぶりになったことで、楽曲でいう転調のような変化を感じる。

「なんか無理やり、無理やりっていうか、私がぁ、ほんとに入れるの向いてないんだなって感じなんですよ。フフフ。けっこうまあ、あっちもクンニとかしてくれて、べしょべしょだったんで、割とスムーズに入ったんですけど、奥まで入ってくると、痛いというか、苦しくて、しかもあっちがイクのが遅いんですね。で、ヴゥワァァ~、みたいな感じになって。けど、痛がったらあっちがかわいそうってのもあるから我慢して、演技したんですけど、アハアハハハ」

 聞けば、自分でオナニーをする場合は、電マを使って十分に潤った状態になれば、挿入したバイブでイクこともあるのだという。つまり、準備次第では決して膣内が感じないわけではないのだ。だが、男性ではその状態にまで導く相手がいないというのが、カオルの現実だった。

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