「戦場から風俗まで」をキャッチフレーズに国際紛争、大規模自然災害、殺人事件、風俗業界の取材を行ってきた小野一光氏は、かつて20年以上、毎週1人の割合で風俗嬢のインタビュー取材を続けていた。
性暴力の記憶、毒親、貧困、セックスレス――。それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たちは一体何を語るのか。
ここでは小野氏の新著『限界風俗嬢』(集英社)の一部を抜粋。以前インタビューを行った“処女SM嬢”カオルさんのその後について紹介する。(全5回の3回目/続きを読む)
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1年以上ぶり…カオルに取材を申し込む
あの取材から1年半が経った――。
“期待と不安”、というか、不安のほうが大きいので、“不安と期待”の心境でカオルに取材を申し込むラインを送った。
じつは前回の取材から4カ月後に、一度だけラインで彼女が転職したこと、さらにSMクラブを辞めるつもりだということを聞いていたが、そこから起算しても1年以上ぶりの連絡である。
時間が経過すると、過去の自分と訣別したくなった女性は、過去の自分を知る相手との繫がりを断ち切ってしまいがちだ。それはそれでしょうがないと、私は簡単に諦めることにしている。はたして彼女はどちらなのだろう。
と、30分ほどで返信があった。
お久しぶりです!
ありがとうございます!
お受けしたいと考えておりますが、どういった内容でしょうか?
私は前回と似た内容で、その後のことが聞きたいと伝えた。謝礼も同じく1万円だ。
了解です!大丈夫です!
基本平日(月、金)の夜か土日なら空けられます~
前回とまったく変わらないカオルの反応に胸を撫で下ろす。互いの都合を調整し、11日後の月曜日に某駅前で待ち合わせることにした。前の会社を辞めた彼女の、新たな就職先に近い駅だという。そういうことを躊躇なく明かすところも相変わらずだと思った。
転職先は中小企業の事務
「ご無沙汰してます」
白いタートルネックセーターに白いカーディガン、細かいチェック柄のロングスカートという出で立ちで、待ち合わせ場所に立つカオルは笑顔で言った。1年半のブランクをまったく感じさせない屈託のなさだ。
2人で並んで歩き、近くにあるカラオケボックスへと向かう。