「××(SMクラブ)を辞めたのって、去年の10月末だと記憶してるんだけど、どうして辞めたの?」
個室に入ると、私はまず転職したという彼女が、前年の秋に送ってきたラインについて触れた。それは次のような文面だった。
ご無沙汰しております!
仕事は順調です。だいぶ落ち着いてきましたので、今月いっぱいで××を辞めさせていただくことにしました
「どうしてだったかなあ。まあ、ふつうに仕事も安定して、続ける必要がなくなったっていうか……」
「昼の仕事が安定してるっていうことだよね。ところで転職先ってどういう会社?」
「私がやってるのは事務の仕事なんですけど、××を作ってる会社です」
どちらかといえばニッチな、すぐに特定されてしまう製品の会社であるため、ここでは詳述できないが、カオルは勤務先について製造業の会社であることを明かした。もちろん、一部上場企業だった前の会社にくらべると規模の小さな中小企業である。そのことに抵抗はなかったかと尋ねると、彼女は即答した。
優しい人が多くて居心地はいい会社
「私ってあんまり会社の業績の良し悪しってわからないんですよ。それよりも、とりあえず正社員ならなんでもいいっていう、ハハハ。正社員の事務で、とりあえずどっか就ければって感じでしたね」
いまやっているのは経理事務で、最初はいろいろ覚えることがあったそうだが、すぐに仕事には慣れたという。
「給料とかは減ったの?」
「それは減りましたね。前は手取りで20万円くらいだったのが、いまは17万円くらいです」
ただし、前の会社は拘束時間がとにかく長く、それにくらべれば現在の会社は定時に終わるため、負担も少ないと笑う。
「いま居るのはちっちゃい会社なんで、みんな仲良しだし、優しい人が多くて居心地はいいですね」
風俗から“パパ活”へ
「××(SMクラブ)を辞めちゃってからは、風俗は一切なし?」
「そうですね。風俗は、やってなくて……」
「援交?」
「ハハハ、そうです。援交は……今年9月くらいに“パパ活”をやって、みたいな」照れ笑いを浮かべる。パパ活も、言葉はよりソフトになっているが、要は援助交際ということである。カオルは続けた。
「それで、昨日も(パパ活を)やったんですけど、もうヤダァ~って感じになっちゃって」
「昨日って、9月から3カ月くらいだけど、その間に何人くらいとパパ活したの?」
「昨日が3人目です」
「わかった。じゃあそれは後でゆっくり聞こうか」