文春オンライン

演技からファッション、植物収集まで… “ギャップ俳優”滝藤賢一が思う「仕事のために一番必要なこと」

2021/08/19
note

「ズレ」「落差」などの意味を持つ“ギャップ”は、どちらかと言うとマイナスの言葉に受け取られやすい。

 しかし逆にこれが魅力を意味する言葉に変換されるのもよくある話。アスリート、ミュージシャン、俳優…それぞれの舞台でのパフォーマンスのなかに生じるギャップもあれば、普段の姿とのギャップもある。それがあればあるほど興味や関心をくすぐられる。私事で恐縮だが、35年ほど前だったか、中学生なのに時代劇好きだった筆者にとって「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」でハンカチを握って額の汗を拭う松方弘樹は衝撃すぎた。あまりのギャップから、松平健、里見浩太朗推しだったのが松方推しにチェンジしたことを覚えている。

 俳優・滝藤賢一は、まさにギャップの人だ。

ADVERTISEMENT

 同じ作品で示す見事なコントラストは、観る者の心を揺さぶる。

滝藤が心を壊す記者を熱演した映画「クライマーズ・ハイ」

 映画「クライマーズ・ハイ」では日航機墜落事故の惨劇を目の当たりにして、心が崩壊してしまう新聞記者役を演じた。仕事に意欲を燃やす事故前の姿から一変していく迫真の演技は、彼の名を知らしめる作品ともなった。その後ドラマ「半沢直樹」の近藤直弼役に出会うわけだが、もはやブレイクは時間の問題だった。

 ギャップという点では昨年の大河ドラマ「麒麟がくる」を忘れてはいけない。室町幕府最後の将軍である足利義昭公が脱いだらムッキムキのバッキバキという意表を突いてきた。作品上でギャップを生み出すこの人は、絶対ミステリアスな生活を送っているはずと踏んでいたら、「子供は4人います」などとプライベートも結構オープンだ。そちらのギャップもまた魅力となっている。

 最新の出演映画は「孤狼の血」の続編となる「孤狼の血LEVEL2」(8月20日公開)。暴対法成立前の平成初期、広島の架空都市・呉原市がその舞台となるが、滝藤は松坂桃李演じる一匹狼の刑事・日岡秀一を排除しようとするかなりクセの強い、広島県警本部・捜査一課管理官、嵯峨大輔を演じている。第一作で煮え湯を飲まされている嵯峨は「日岡だけは許せない」と思っているはずなのに、作品での再会の際には、まさかの満面のスマイル…。

 これもギャップ、あれもギャップ、それもギャップ。

 もう、直接聞いてみるしかありません。

滝藤賢一さん

◆◆◆

“来週、脱いでいただいてもいいですか?”と聞かれまして

――「麒麟がくる」で演じられた足利義昭公ですが、まさかの脱いだらムッキムキ! 大河ドラマを観てのけぞったのは初めての経験でした。

滝藤 別にあのために鍛えていたわけじゃないんですけどね。急きょ監督のほうから“来週、脱いでいただいてもいいですか?”と聞かれまして。「全然脱いで構いませんけど、ちょっとバッキバキですよ」と(笑)。