主要道路から少し離れた場所に、緑に覆われた建物があった。最初に目につくのは、無数の落書きだ。窓ガラスは割れ、廃墟のようにしか見えない。荒廃した各部屋の上部では、独特な放射模様のステンドグラスが異彩を放っている。
藪をかき分けて奥の建物に到達すると、その入り口には“降霊殿”と書かれていた。ここはかつて、ある新興宗教団体が本拠地にしていた施設なのだ。その奥へと、私は足を踏み入れた――。
10年ほど前から“心霊スポット”に
四国にあるこれらの建物は、「宗教施設の廃墟」ということで、10年ほど前から心霊スポットと呼ばれるようになった。すると、多くの人が肝試しのため勝手に訪れるようになり、時には破壊行為を行う者まで現れた。窓ガラスは割られ、落書きは増え、荒廃が一気に進んだ結果、今のような状態になってしまった。
そしていつからか、ネット上では真偽不明の噂話が出回るようになった。1つはオーソドックスに「幽霊が出る」というもの。もう1つは、「一時期“白装束集団”として世間の注目を集めたパナウェーブ研究所が、この施設の運営母体だった」というものだ。
パナウェーブ研究所といえば、奇しくも私が20年来追いかけ続けてきた宗教団体でもある(2021年5月8日の記事を参照)。そこで私は噂の真相を確かめるべく、四国へ向かった。
3つの大きな建物から成る宗教施設
現地では、この建物を管理している宮崎浩二法律事務所(香川県高松市)の弁護士・宮崎浩二さんとお会いすることができた。宮崎さんは裁判所から、この施設を本拠地にしていた宗教法人の管財人に選任されており、現地を訪れて自ら貼り紙をしたり草を刈ったりして管理をされている。
弁護士の先生といえば、法廷や事務所でお仕事をされているイメージだったので、自ら草刈りされている姿は、とても意外だった。
その宮崎さんにご案内いただきながら、私は施設を巡った。この敷地内には大きな建物が3棟ある。講堂と降霊殿、そして宿坊だ。