「幽霊が出る」という噂の根拠
次に私は、ネット上での噂の真相を確かめるべく、宮崎さんに質問してみた。まずは「幽霊が出る」というものについて。本当に幽霊が出るかどうかはともかく、誰かがここで亡くなっていなければ、この噂はそもそも成立しない。そこで、この場所で過去に事故や事件によって死者が出ていないか、聞いてみた。
「宗教活動は穏やかで、過激な活動もしていませんでした。ここで活動している間に死者が出るようなことはありませんでしたし、使われなくなってから現在までも、誰かが死んだというようなことはありません」
また、ここで怪奇的な現象が起こるとか、そういった話も聞いたことがないという。そもそも誰も亡くなっていないのだから、この場所で幽霊が出る余地はない。「幽霊が出る」という話は、デマで間違いないだろう。
実は、廃墟ではこうした根も葉もない噂が囁かれることが少なくない。例えば“一家惨殺の家”や“一家心中の家”と言われるような廃屋を調査すると、ほぼ100%が夜逃げした廃屋だ。生活の痕跡がそのまま残されているというだけで、勝手な妄想が噂話として独り歩きするのだ。
パナウェーブ研究所との関わりは?
そして、私はもう一つの噂、パナウェーブ研究所との関わりについても聞いてみた。パナウェーブ研究所の運営母体は千乃正法会だが、一度として宗教法人として登記されたことがないため、あくまでも“宗教団体”だ。そんな千乃正法会が、宗教法人として登記されている聖福院の運営母体であるというのは、いささか考えにくいが――。
「パナウェーブ研究所ですか? そのような団体との関わりは、登記上も(訴訟の)証拠としても一切出てきません」
噂話というのは、こういうものだ。
そもそもの話だが、現在は使われていないとはいえ、他人の土地に勝手に立ち入ることは犯罪行為にあたる。物を破壊したり落書きするのも犯罪だし、放火をすれば重罪だ。肝試しなど安易な気持ちで訪れると、警察のお世話になる可能性がある。