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息子のプロデビューを前に両親の心境は?

――そんな一騒動について、英五郎さんご本人の反応は……?

佳子 子どもたちはよく赤井の性格を知ってるから、当人は「そうか、わかった」という程度でしたけど、ショックは受けていたようです。長女や次男は、「マジか、言っちゃったんだ」、「でも無理だよな、パパに黙っとけっていうのは」と、変に理解していた感じでしたけど。

――英五郎さんはその後、どのような経緯でボクサーの道へ?

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佳子 その後はそれっきりボクシングの話題は出ず、彼はハワイからロサンゼルスの大学に進みました。そうしたらある日、「僕、ボクサーになりました」と言って突然、赤井のところにアメリカのアマチュアボクシングのライセンスを持ってきたんです。赤井への誕生日プレゼントにしたかったらしくて。

赤井 麻薬や銃弾が飛び交うような治安の悪い地域にある小さなジムに通い、1人で黙々と練習しとったそうなんです。めちゃくちゃ嬉しかったですね。

©深野未季/文藝春秋

――しかし、赤井さんが最後の試合で生命にかかわる大怪我をしていることを思えば、息子さんが同じ道を行くことに、不安などなかったですか。

佳子 それよりも、彼がやりたいことを見つけた喜びのほうが大きかったです。でも、いざ試合がるというので観に行ったら、急に怖くなってしまって……。会場の体育館の壁に応援の横断幕を貼ろうとしたら、手が震えてガムテープが切れなかったのを覚えています。「怪我したらどうしよう」、「赤井みたいになったらどうしよう」と、不安でたまらなかったですね。

 でも、よく考えてみれば、あれほどの怪我をした赤井が、いまこうして隣で元気にしているわけです。だったら怪我をしても大丈夫なんじゃないかと、次第に前向きな気持ちになりました。

――そしてアマチュア経験を経て、ついにプロデビュー。所属はボクシング界の名門として知られる帝拳ジムです。これは赤井さんのご推薦ですか?

赤井 付き合いのあるボクシング雑誌の編集者に相談したら、2つのジムを提案されたんです。「アマチュア出身の選手を大切に育ててくれるのはAというジム。しかし、息子さんは赤井さんの名前もあるから、その点でもちゃんと管理してくれるのは帝拳ジムでしょう」と。

佳子 私はよくわからないので、それだけ聞いているとAジムのほうがいいんじゃないかって言ったんです。すると、普段は何事に対しても意見を言わない赤井が、「いや、絶対に帝拳がええ」と言うので驚きました。理由を聞いてみると、自分がかつて選手1人だけの小さなジムにいて苦労した経験があるから、「帝拳のような大手で見てもらえるならそのほうがいい」ということらしくて。赤井がこんなにはっきり意見を言うなら、もう帝拳さんしかないんだろうなと私も理解しました。

――9月にデビュー戦が決まっていますが、率直に今、どういうお気持ちですか?

赤井 そらもう、めちゃくちゃ楽しみですよ!