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 そんな光景が繰り広げられているところで、もう1人の怖いお兄さんが注意書きを指差しながら、客に語りかけてくる。

「お客さん、どうしましょう? この店のシステム分かってますよね」

 全裸の客は股間を抑え、情けない声を上げることしかできない。

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「せめて服を着させてください」と言ったところで「人が真剣に話をしてるのに、なにが服を着させてくれだと。そもそも自分から脱いだものだろうが、そのまま話を聞いとけ!」とやられるだけだ。

 そこに追い討ちがかけられる。

 風俗嬢を責めているほうのお兄さんが、こう言うのだ。

「こいつ(風俗嬢)、本番に入る前に、うちのシステムを説明したらしいですよ」

 実際は注意書きに目を向けて「本番NGだから」と言っただけだが、巧みに「システムを説明した」と言い換えられている。

全裸 VS 2人の怖いお兄さん

 違うと反論しようにも震え上がった客は口から言葉が出てこない。結果、それを受け入れた形になる。

「すべて分かってやったってことですね。いい度胸してるじゃないか。それなら話が早い。銀行のカードと暗証番号をお願いできるかな」

 これで一丁あがり。

 この手口の肝はなんといっても「客が全裸である」ことだ。仮に服を着ていれば多少なりとも抵抗することができるかもしれないし、隙を見て逃げることも可能かもしれない。

 しかし全裸ではどうすることもできない。「全裸 VS 2人の怖いお兄さん」という図式では交渉すらできないのである。

 状況を打破したいと思ったら、怒鳴られようがつかまれようが服を身につけてしまうことだ。さすがに暴力に訴えてくることは考えにくいから、さっと下着だけでもはいてしまう。それだけでも大きく気の持ちようは変わってくることだろう。

 仕込みは「張り紙一枚」という些細なものでも、使い方によっては、これほどの威力を発揮するのである。

タイに着いて初日に詐欺に遭う

 このような手法は古今東西、さまざまな場所で見ることができる。

 それは海の向こうも例外ではない。

 筆者は2005年の年始に、タイからカンボジアまでを陸路で移動したが、その道中で2人の旅行者に会った。それぞれ個別に旅行していた大村氏(仮名)と佐藤氏(仮名)である。私たちは年齢が近かったこともあり、すぐに意気投合し、行動を共にするようになった。

 ある日、昼食をとっていると、今回が初めての海外旅行であるという佐藤氏がこんなことを言い出した。