主人公の中村誠は「弱っちい」ところもあるまじめな商社マン。娘と息子は可愛い盛り。妻は毎日お弁当を作ってくれる。問題はただ一つ、その妻が最低限の会話以外、自分と口をきいてくれないこと。それが3日、3カ月、1年と続き……。
『離婚してもいいですか?』などで知られる著者が、現代日本の夫婦の問題をシンプルな線と削ぎ落としたセリフで描いたコミック。集英社のウェブサイト「よみタイ」で連載され、アクセス数は累計3000万PVを突破。大反響を得て書籍化され、同著者の『消えたママ友』(KADOKAWA)と共に第25回手塚治虫文化賞「短編賞」を受賞した。
中盤から妻の美咲が口を閉ざす理由が次々と明かされていく。たとえばそのひとつは、夫が子どもの薬の置き場所を覚えないこと。
「夫からすればきっと些細なことばかり。でも妻にとってはどれも切実で意味のある怒りなんです。同じ空間にいても、夫婦がそれぞれ見ている光景と心の内はいかに違うかを示すリアルなエピソードでもあり、読者の共感を呼んでいます」(担当編集者の今野加寿子さん)
結局誠は離婚を切り出すが、美咲は驚きの反応を示す。そして怒濤の終盤へ。
「ラストの捉え方は様々。その違いは読む人の夫婦関係の現状を映し出しているように感じます。自分はどう考えるかを本書で確かめてほしいです」(今野さん)
2020年11月発売。初版1万5000部。現在3刷9万部(電子含む)