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「ほんとうに子供を殺そうと思いましたからね」 稲川淳二が語った“難病を抱えた次男”と“妻との別居”

「ほんとうに子供を殺そうと思いましたからね」 稲川淳二が語った“難病を抱えた次男”と“妻との別居”

『藝人春秋』より#2

2021/08/22

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 芸能, テレビ・ラジオ, 読書, 働き方

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別居の真相に、難病を抱えた次男の存在

 稲川さんには男のお子さんが二人いるが、結婚9年目にして生まれた次男、由輝くんは、クルゾン病という病気を生まれたときから患っていたのだった。

 クルゾン病とは、頭蓋骨の割れ目が早期に閉じることで脳の成長に変調を来たし顔が変形したり、脳障害、失明を引き起こすという難病中の難病である。

 この話そのものが、ボク自身が寡聞にして初耳であった。

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 そして、他の資料を読み進めていくなかで、別居にまつわる真相が稲川さん自身によって語られていたのだ。

「一度きちんと説明しておかないといけないと思いまして……。妻は、由輝のことがあってからすっかり変わってしまいました。すべてに疲れているというか、何事にも意欲がなくなってしまったというか……。由輝は生後4ヶ月で手術を受けて、2歳頃から学園に行くようになったんです。かみさんはその間、病院に付き添いで泊り込んだり、毎日、学園に様子を見に行ったり、肉体的にも精神的にも、それはつらい、疲れていると思います。由輝はいつ、どうなるかわからないのですから。爆弾をかかえているようなものですから。だから、女房は、ふだんでも緊張しています。そんな生活をしている女房にワタシが『おまえ、大丈夫か?』なんて優しいこといったら足もとから崩れ落ちてしまいますよ。そうはいっても、外で、お笑いをやって帰ってきた人間にとって、家で女房のつらい顔を見るというのも切ないものなんです。ワガママだと言われるかもしれないけど、ワタシだって家では、ほっとしたい。だったら、いっそ一人で暮らしたほうがいい……。それが現在の生活の本当のところなんです」

〈そういう経緯だったのか─―〉

 資料を読みながら推理小説の謎解きを読んでいるような気分と同時に、紛れもない事実であることに戸惑っていた。

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