山地から届いた手紙
〈内山新吾弁護士
先日は接見拒否の為、会う事をいたしませんでした。私は私なりに色々と考えた上での行動です。
手紙に書いてありました「死刑になって欲しくない」、「上訴を取り下げないで欲しい」、これらについての私の考えは、変わりがありません。
「上告・上訴は取り下げます。」
この意志は変える事がありません。
判決が決定されて、あと何ヶ月、何年生きるのか私は知りませんが、私が今思う事はただ一つ、
「私は生まれてくるべきではなかった」
という事です。今回、前回の事件を起こす起こさないではなく、「生」そのものが、あるべきではなかった、と思っております。
この考えは、ある意味「悟り」なのかもしれませんが、私としては、この考えが私自身の気持ちを一番表わしていると思います。
色々とご迷惑をお掛けして申し訳ございません。さようなら。
平成18年12月中旬、山地悠紀夫
追伸 面会及びに着信等におき、拒否願いを提出しました。今後、面会、通信が出来なくなると思います〉
その後、内山さんが山地へ出した手紙は「受取拒否」の印が押されて戻ってくるようになった。
山地は07年5月に控訴を取り下げて死刑が確定。09年7月28日に大阪拘置所で刑が執行された。
内山さんは無念を口にする。
「彼のことを放っておく状態にしてしまった。なんでもっと連絡を取って、連絡が取れないときには捜したり、つきとめたりしなかったのか。さらに言えば、彼にいろんな思いのあった人が、連携してサポートできなかったのか。そうしていれば、第2の事件は起きなかったと思う。その点で悔やまれてならない……」
納骨できない──遺族の10年間
汗ばむ陽気のなか、私は奈良県内にある住宅地を訪ねた。山を切り開いた高台にあるその一軒家のドアベルを押すと、まさに外出しようとしていた年配の女性と出くわした。
坂田千鶴子さん(仮名)。山地に大阪で殺害された有希さんと真美さんの母である。