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父に使いこまれた奨学金は315万、「小学生の頃から“お金貸して”と」…岩手の困窮農家に生まれた男性(33)の壮絶すぎる人生

AIクレジット・足澤憲さんインタビュー #1

2021/08/30
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とにかく働かない父

――なんだか農作業にお父様がひとつも加わっていない様子ですが?

足澤 僕らがやっている間、家のリビングに寝っ転がってテレビを観ているんですよ(笑)。作業小屋で夜遅くまで箱詰めをして家に帰ると、父が寝っ転がりながら「おう」って感じで。ものすごく腹が立ちましたね。

 基本的には機械仕事はやるんですよ。でも、めちゃめちゃ疲れるような、体を使った地道な作業になると「頼んだぞ」みたいな。仕事はだらだらというか、あまりやりたがらないタイプで。

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 一時期、バイトでタクシーの運転手をやっていた時があるんですけど。家に出る前に外を見て「あぁ、雨降ってんな。今日は休むか」とか言って寝っ転がる。でも、タクシーって、雨が降っている日の方が使われるじゃないですか。

――酒に溺れていたりとかは。

足澤 お酒とタバコはやりますけど、依存症とかでもなく、ギャンブルに手を出すわけでもなく。ただ、本気でダラダラしている人というか。

――働かないけど、それ以外は良いお父さんみたいなところは。

足澤 いやぁ、どうでしょうね。父が生きている間に僕と話した時間をギュッとまとめたら、ほんと1日もないんじゃないかな。それくらい喋ったことがなくて。なにか話しかけても「うん」とか相槌を打つくらいでしたね。

 家族とコミュニケーションを取らないくせに、外では饒舌に喋るんですよ。岩手の農家の会議に呼ばれたりすると、意気揚々と話して帰ってくる。人前で目立つことは好きだけど、地味な農作業や子育ては面倒だからやらないんですよ。

 そんな感じで働かないから、お金も入ってくるわけでもない。だから、とりあえず借金の利息だけは払うみたいになっていたんじゃないですかね。

――お父様の借金の経緯はご存知ですか?

足澤 家庭内でもいろいろと検証したんですけど、結局その理由がわからないんですよ。父は会社員をやっていて、僕が小学校の3年か4年ぐらいの時に会社を辞めたんですけど、それと同時に借金を作ったらしいということしかわからなくて。かといって事業を始めたわけでもなく。父があまり喋ってくれないので母も事情がよくわからない感じでした。