再調査でいじめがあったことが認められたのは大きな成果
これまでの経緯を踏まえ、信太郎さんに話をうかがった。
――現在、2種類の報告書があります。再調査委員会の報告書では、いじめを認定しつつも、いじめと自殺の直接的な関係を認めず、「いじめを含むさまざまなストレスが複合した結果、自死に至った」と書いてありました。どう評価しますか。
信太郎 報告書では、いじめがあったことを認めました。私たち遺族が主張してきた「いじめがあった」ということは妄言や虚言で言っていたわけではないことを知っていただけた。これまでは、学校や市教委にいくら言ってものれんに腕押し状態でした。地元の人も、何があったのか知らないで、誹謗中傷もありました。100点満点には届きませんが、非常に大きな成果がありました。ただし、こうした調査がもっと早ければ、いじめの事実がもっと多く出てきたと思います。
例えば、合宿の前夜、娘はユニフォームに名前をつけるためのボタンを針と糸で縫っていました。常設の「いじめ対策検討会議」の調査で、何度も「“ボタンで止めろ”って誰が言っていましたか? “安全ピンでいい”と言っていませんでしたか?」と聞かれました。しかし、娘は「ボタンで止める」と言い、買いに行ったほどです。3時間かけて、家庭科の教科書を見ながらしていました。もしかしたら嘘を言われていたのかもしれません。
また、雨の日に練習のために学校に行きました。すると「誰もいなかった」というのです。校内にいた先生に聞くと、「雨の日は休み」と言っていたそうです。手渡された部活のルールが書いてある紙には、そのことは書いてありません。まだ娘だけが知らないということがありました。これらのことは報告書には一度も出てきません。
娘のために「オブジェを作ります」と言われても…
――学校や市教委はこれまで「いじめ」を認めてきませんでしたね。ご家族としては、事後対応についても納得されていないようですが……。
信太郎 学校はいじめを認めない体質なんです。たしかに、学校は何回も自宅に来ました。「これだけコミュニケーションを取ってきました」「毎月来た」といいますが、こっちから話すことが多かったし、言ったことがなされないことが多くありました。顕著なのは、頑なに保護者会を開催しなかったことです。保護者会を開いて同情者が多くなれば、こちらに情報が集まってしまい、いじめがあったということになります。だから隠蔽するんでしょう。
学校は「隠蔽していない」と言うのですが、受け取り側は「隠蔽」と思います。広義で言えば、それもいじめられていたのでしょう。娘のことで、何かを対応してきたことがない。例えば、「オブジェを作ります。娘さんは何色が好きでしたか?」と聞かれたことがありました。その後、「保護者に公開します。よろしければ見に来ませんか?」と言われたのです。「いったい、誰に見せたいのですか?」と思ったんです。結局、見に行きませんでした。