――市長と教育長が謝罪に来たときに「娘を返せ」とおっしゃったと思います。その思いは……?
信太郎 「娘を返せ」というのは、あくまでも教育長に言ったんです。ネットでは、市長に言ったようなコメントがあり、誤解をされました。あのときは怒りが抑えきれず怒鳴りつけました。教育長は「自死の要因はいじめだけでない」と言ったのですが、その一言がまったく他人事だと思いました。
報告書にあるのは、いじめも、学校の対応も、部活も、自死の原因だと指摘しています。学校の責任は重いと。だったら、私の言葉に反論するのは報告書の内容と向き合っていないのではないでしょうか。「いじめで死んだわけじゃない」と聞こえました。つまりは責任を感じていないんですよ。だから「社交辞令」と思ったんです。どこまで娘を馬鹿にしているのか。本人の目の前でよくそんな口が聞けるなと思いました。
指導がないから加害者の反省もない
――学校や市教委が、加害者を庇っているとも受け取れますが。
信太郎 庇っているし、逃がしていますね。本来であれば調査や指導をしないと加害者本人が自覚せず、反省もしないまま大人になってしまいます。更生させるためには指導が必要です。その保護者も同様です。その上で、娘が叶えられないことが沢山ありましたので、娘の分を頑張ってほしいと伝えたい。その頑張りを娘や私に報告することが本当の謝罪なのではないでしょうか。
私たちは、3年半、“犯人探しをしている”などと言われました。アンケートで実名が書かれていたので、すでに加害者のことは知っています。犯人探しをする必要はありません。ただ、加害者擁護は度が過ぎています。指導を放棄しています。それが新たないじめにつながります。
再調査結果を受けた市教委の見解は
名古屋市教委指導室では、「市教委の調査委とは、いじめの認定について違う点もあるが、再調査結果は市教委として受け止めたい。保護者説明会が当初開けなかったことについては、個別に遺族に説明するほうがよいというのが当時の判断だった。しかし、“自殺は家庭の問題”という噂が流れた点は、保護者説明会を開くことで防げたのかはわからないが、学校の事件への向き合い方を伝えることで、事実無根の噂が出なくなることは否定できない。提言内容にしっかりと取り組み、遺族からの信頼を取り戻したい」と話している。
写真=渋井哲也