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同級生が語る鈴木の本性

「自分らとは腹かく(腹を立てる)場所が違うというか、どうでもないことで急にキレるタイプなんですよ。あいつはちょっとだけ柔道部に入ってたんですけど、冗談で足技をかけたりすると、腹ばかいて、手加減なく相手を投げ飛ばしたりするんです」

 別の同級生の自宅を訪ねたときのことだ。彼、只野宏一郎さん(仮名)は戸棚から葉書を取り出して私に見せた。それは鈴木が2000年の正月に只野さんに宛てた年賀状だった。裏面を見ると、前年に行われた結婚式で、タキシードとウェディングドレス姿でケーキカットをする鈴木と妻が写っていた。只野さんは鈴木の顔を指差し語る。

「鈴木は奥さんが看護婦をしよるとよく自慢してました。何度か直方の繁華街で飲んだりしたんですが、結局は“ええかっこしい”なんですよ。あいつには馴染みの飲み屋が何軒もありました。そこに常連のような顔をして寿司折りとかを持って行き、店では大盤振る舞いをして、女の子の歓心を得たりするんが大好きやったんです」

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 鈴木は自分の身の丈以上にカネを遣い、無計画に借金を重ねていたとの、嘆息混じりの言葉が続く。

「友だちやら、消費者金融なんかにカネを借りまくってました。それで借金取りがやってきて、あいつの親父さんが肩代わりしたことも何度かありました。前に親父さんに会ったとき『(鈴木の借金が)たぶん1000万くらいあったんじゃなかろうか』という話も聞いてます。整備工場を辞めたのも、奥さんに内緒で自宅を抵当に入れて数百万のカネを借り、それがバレて勘当されたからなんです」

 自宅を抵当にした借金は、鈴木の父親の援助で弁済した。只野さんによれば、鈴木は懲りずに、その後さらにもう一度、自宅を抵当に借金をしたのだそうだ。それが04年9月ごろにバレてしまい、夫婦関係は破綻していたという。

連続殺人犯 (文春文庫)

小野一光

文藝春秋

2019年2月8日 発売