平均身長がほぼ同じアルゼンチンの強化策に着目
懸命に努力をしているのになぜ日本が世界に勝てないのか。海外も含め20年間のコーチ経験がある東野は、その原因を探っているうちに、アルゼンチンの強化策に着目する。
アルゼンチンの平均身長は日本とほぼ同じ。しかも96年のアトランタ五輪に出場するまで44年間も五輪から見放されていた。どん底から這い上がり04年のアテネ五輪では金メダルを獲るまでに成長。これは参考になると考え、アポなしでアルゼンチンに飛んだ。そして母校の大学院でアルゼンチンの強化策を分析し発表、「早稲田大学最優秀論文賞」を受賞している。
そんな探求心と行動力が川淵の目に留まり、45歳で技術委員長に抜てきされた。
「技術委員会を分かりやすくいうと、日本バスケ界の競技力の発展をリードする委員会です。“普及”“発掘”“育成”“養成”“強化”の五つを柱に、それぞれの担当者みんなで力を合わせ、改善しながら積み上げています」
原因の追究と伝達する体制
それまでバスケ界も、他の競技団体と同じように五輪や国際大会で結果が出ないと、ヘッドコーチを交代させまた一からやり直し。何がダメでその原因は何かという根本の究明はなおざりにされてきた。これでは未来に何もつながらない。東野はまずそこにメスを入れた。
「世界のバスケをしっかり知った上で、日本バスケの方向性を示し、それを追求し、継続していく体制作りです。五輪や世界大会で得た知見、コンテンツをしっかりと残し、蓄積していく。また技術的なことも課題を抽出し、改善する。こうしたことをテクニカルレポートなどできちんと残し、伝達していく体制がそれまでできていなかった」
また、東野は代表などが国際大会で得た知見、あるいは戦術、技術などの情報を全カテゴリーにも共有するシステムも構築。東野はその強化システムを「一気通貫」と呼ぶ。
「トップカテゴリーだけでなくアンダーカテゴリーの全世代で、世界で闘うために必要なプレーや情報を共有すれば、若手の成長も速いし、早くから“日常を世界基準に”の思考にシフトできる」