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 藤井は対局後に行われたインタビューにて、

「過去に三冠になられた方は、偉大な棋士ばかりで光栄に思っています。自分自身の今後がさらに問われることだと思っているので、今まで以上に取り組んでいく必要があると思っています」

 と答えた。

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記者会見では、叡王戦の主催社・不二家のキャラクター「ペコちゃん」を抱きかかえる場面も ©釜谷洋史/文藝春秋

 挑戦も防衛もすべて成功し、タイトル獲得5期、タイトル戦通算成績は17勝4敗、勝率0.810。これで19歳1ヶ月はありえない成績だ。どこまで強くなるのだろうか。

これは読んでいるときの仕草だ

 棋譜は2人で作り上げるもの。豊島対藤井だったからこそ、これだけの名局が生まれたのだ。

 感想戦では私は豊島をずっと観察していた。局後の勝者へのインタビュー、敗者に辛い時間だ。しかし、豊島は正座を崩さす、背筋を正し、こっそりと膝の上で指をタクトのように動かしていた。

豊島は、まもなく藤井を挑戦者に迎えての竜王戦七番勝負が控えている 写真提供:日本将棋連盟

 これは読んでいるときの仕草だ。敗戦にうなだれるのではなく、何を間違えたのか、敗着をなにかと考え、反省し、次につなげようという顔だ。

 マイクが向けられると豊島はこう語った。

「強い棋士と指して課題がたくさん見えてきましたし、勉強になった10局だったかな、というふうに思います」

 豊島はもう前を向いている。次の竜王戦七番勝負を見ている。戦いはこれからもずっと続く。

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