他人事ではないコロナ禍の貧困が、じわじわと社会を侵食している。生活保護を申請したら収容所のような「無料低額宿泊所」に放り込まれた人、コロナ切りに遭った女性の面接希望が殺到するデリヘルやガールズバー、民泊の仮面をかぶり1部屋に8人を同居させる“脱法ドミトリー”……。

 そんな中、水面下で蔓延しているのが「SNSヤミ金」だ。コロナ禍の貧困支援の現場を1年間にわたり密着取材しているジャーナリストの藤田和恵氏は、こう語る。

ヤミ金はヤミ金。一度借りてしまったが最後

「生活苦に陥った人は、行政や支援団体に相談する前に、まず自分でなんとかしようとしてしまいます。ぎりぎりまで追い詰められ、藁にもすがる思いでネットを検索し、たどり着いた先に『SNSを介した違法な個人間融資=SNSヤミ金』がある。SNS経由なので、一度も対面せずにやり取りが完結しますし、中にはアニメキャラなどのかわいらしいアイコンを使ったり、自ら“ソフトヤミ金”と名乗ったりして油断を誘う手口もあります」

ADVERTISEMENT

 しかし、ヤミ金はヤミ金。一度借りてしまったが最後、取り立てはまったく“ソフト”ではない。まずは、その実例を藤田氏のルポルタージュ『ハザードランプを探して 黙殺されるコロナ禍の闇を追う』から見ていく。

融資の条件として相手に送った免許書を手にした写真。返済が遅れるとネット上に指名手配のようにばら撒くと脅され、拡散されれば「デジタル・タトゥー」として残ることに

ヤミ金に手を出した秋頃

 コロナ禍が広がる前、細谷文彦さん(仮名・40代)は地方都市で水産関係の事業を手掛けていた。だが、コロナ禍で経営が悪化し、「夜逃げ同然」で東京に出てきたのは2020年6月である。事業関係の負債や知人・親戚からの借金はかさみ、そうした混乱の中で妻とも離婚。個人事業主に給付された持続化給付金の100万円は、妻と子どもにすべて渡したという。ヤミ金に手を出したのは、秋になって所持金が尽きた頃。

「東京なら何か仕事があるかなと思って出てきたんですが、コロナで全然見つからなくて……。ヤミ金がやばいところだってことは、わかっていました。でも、これ以上周りに迷惑をかけるわけにはいかない。その一心でした」

 お金借りたい、明日必要、ブラック。そんなワードを使ってネットで検索を続け、たどり着いた先に掲示板があった。名前や連絡先などを登録すると、「ご融資のご案内ができます」「即日振込可能です」といったメッセージや、LINEのQRコードを記載したダイレクトメールが連日、何件も届くようになったという。