文春オンライン

コロナ禍で急増 「SNSヤミ金」に手を出した男性の悲惨すぎる“アリ地獄”

“ソフトヤミ金”と名乗って油断を誘う手口だが…

2021/09/23

genre : ライフ, 社会

note

 意外とスムーズに終わるかもしれない――。

 そう思った矢先、細谷さんの携帯が鳴った。実家の母親からだという。弁護士を立てたと知った一部のヤミ金業者らが、今度は実家に脅しの電話をかけ始めたのだ。母親は「実家の住所もわかっている」「今から息子を連れて行って目の前でぼこぼこにしてやる」「父親の職場にも行くからな」などと脅され、かなり動揺しているらしい。

 林弁護士がヤミ金業者と渡り合う横で、細谷さんが母親に向かって「電話に出たらダメだって言ったでしょ」「今、弁護士の先生に相談してるからさ。もうちょっと耐えて。お願いだから」「電話線、引っこ抜いちゃって!」と必死の形相で説得している。ちょうどそのとき、事務所の電話が鳴る。事務の女性が林弁護士に、留守番電話にメッセージを残した業者が折り返しの電話をかけてきたことを告げる。

ADVERTISEMENT

 やはり、一筋縄ではいかないのか。

実は情報弱者な若者たち

 昨今のSNSヤミ金の蔓延について、元埼玉県警捜査一課でデジタル捜査班長も務めた佐々木成三氏は、こう指摘する。

「胴元は従来のヤミ金と同じく反社、半グレがメインですが、あくまで個人間融資で、アカウントも売買して足がつかないようにしているので、取り締まりにくい。また、自らの手を汚さず、返済に困った人間を手駒として利用するなど知能犯化しています。追い込みもあからさまな暴力行為は伴いませんが、本人だけでなくSNSアカウントに紐付いている家族や友人、知人、会社に脅しをかけるなど巧妙狡猾。利用してしまう側の心理としては『SNSで完結するのでハードルが低い』というものがありますが、逆にヤミ金側にも『SNSはカモが見つけやすい』というメリットがあります」

 なぜSNSはカモを見つけやすいのか?

「カモになりやすい属性の人を見抜きやすいからです。例えば、よくある『現金プレゼント企画』。これに応募した人は、お金に困っている、もしくはお金に興味があるということ。前澤友作氏などの例外を除く大多数が架空のイベントで、実際はカモリストの作成に利用されています」

 副業、融資、投資などの怪しい宣伝も同様だ。さらに、佐々木氏はSNS特有のリスクに警鐘を鳴らす。