戦後最大の企業犯罪「リクルート事件」の首謀者としてよく知られる江副浩正。一方で、彼が立ち上げたリクルートは平成不況の「失われた30年」を経て健在。加えて、「元リク」と呼ばれる優秀な人材を様々な業界に輩出し続けている。どちらも江副が稀代の起業家・経営者として作り上げた社風ゆえのこと。そんな善悪両面を併せ持つ人物の像を、豊富な取材で描くノンフィクションが売れている。
「『リクルート疑獄の中心人物』ではなく『起業家としての江副浩正』を正面から論じた本は、これまでほぼありません。著者はゼロから手探りで、大変苦労して執筆していましたが、事件についてずっと沈黙を守ってきたリクルートコスモス元社長の池田友之さんと、江副夫人の碧さんに取材ができたとき、手応えを感じたんです。そして、最後のピースとしてハマったのが、ジェフ・ベゾスが間接的にではあるもののリクルートに関わっていたと知ったこと。著者は日本型の社会主義的な資本主義に対し、本当の資本主義に基づいた経営者の姿をぶつけることを長年のテーマにしています。江副さんをその代表として描く軸が見えたんです」(担当編集者の加藤晴之さん)
読者の約3割が女性と、類書に比べて多い。リクルートは創業当時から女性が活躍できる会社としても知られていたが、その空気が響いているのかも。
2021年1月発売。初版7000部。現在7刷5万部(電子含む)