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「それができたらハッピーだと頭ではわかっていても…」認知症介護の“厳しい現実”を和らげる“当事者目線の優しさ”

『マンガ 認知症』(ニコ・ニコルソン、佐藤眞一 著)――ベストセラー解剖

2021/10/06
『マンガ 認知症』(ニコ・ニコルソン、佐藤眞一 著)ちくま新書

 東日本大震災で全壊した実家を建て直すまでの道のりを描いた『ナガサレール イエタテール』などで知られるマンガ家ニコ・ニコルソン氏が、認知症の祖母を介護する中で感じた数々の悩みや疑問。認知症を心理学からのアプローチで研究している大学教授の佐藤眞一氏が、それに丁寧に答える。具体的な事例への回答を読むうち、体系的な知識も理解できる。マンガと平易な解説文のセットで認知症介護の厳しい現実を和らげてくれる新書が好評だ。

「『きれいごとの本にならないようにしよう』と、ニコ先生と話し合いながら作りました。たとえば、『認知症の人は不安を感じているので、こうやって声をかけましょう』みたいなやり方は類書にも載っています。でも、実際に介護する立場になるとできない。それができたら介護する側もされる側もハッピーだと頭ではわかっていても、辛いんです。そういう気持ちを率直に描いた上で、なんとかできそうなことを伝える本になったと思います」(担当編集者の藤岡美玲さん)

 主な読者は30代から50代の女性。介護の現実に直面し、藁をも掴むように手に取る人が多い。巻末の「行動からさがす」という珍しい索引は、余裕のない介護当事者の手間を少しでも減らすためのニコ氏の提案。他にも、本全体に徹底した当事者目線の優しさが感じられ、胸を打つ。

2020年6月発売。初版1万部。現在14刷7万8500部(電子含む)

マンガ 認知症 (ちくま新書)

ニコ・ニコルソン ,佐藤眞一

筑摩書房

2020年6月9日 発売

「それができたらハッピーだと頭ではわかっていても…」認知症介護の“厳しい現実”を和らげる“当事者目線の優しさ”

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