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特集観る将棋、読む将棋

2021/10/23

比較することでしか自分の位置を確かめられない厳しさ

 人がやっていることを真似たからといっても、

 上手くいく保証は何もないのです。

 自分に合った、自分で見つけた研究のやり方を貫くことで、棋士は確立されていく。木村九段の境地に至った棋士は良いが、若い人はどうなのだろう? 藤井二冠よりも年上の若者たちがまだプロになれずに、奨励会で死闘を繰り広げながらあえいでいる。藤井二冠の登場は、将棋界の活性化につながるし、注目も集まるので大歓迎といいつつ、木村九段からは若い世代を気遣う発言が飛び出す。

 結局、比べるという、一番やってはいけないことを、みんなやってしまう。

 伸びる時期というのは、人が変われば違うのです。

 それを単純に比べると、その人の良さを見失ってしまう。

©文藝春秋

 自分を見失わないことが、折れない心につながっていく。比べないことが一番大切だと説く。なぜならば比べると悲しくなる、と木村九段の表現はどこまでも優しい。伸びる時期は人それぞれと語る時、自分の長かった三段時代を思い出しているのだろうか?

「三段リーグは厳しかったですね。年齢制限がありますから。誕生日が来るのが恐ろしいわけです。藤井さんのように10代でプロになった人は良いですよ。20歳過ぎてプロになったって優等生なわけですが、藤井さんと比べると、ちょっとなあ、となりますからね」

 でも、そういう中でも、ブレずに、自分のやっていることに集中した方が得です。

 私たちは、つい比べる。比べることで自分の位置を確認している。これは教育されたとも思える。小学校から成績表がつく。受験には偏差値という比較の数字がついて回る。成績だけではない、容姿や運動能力、家庭環境など、あらゆることが比較の対象になる。会社に入れば、出世という比較から逃れられない。比較することでしか自分を確かめられないとでもいう世の中になっている。