次第にサウナの魅力にとりつかれ
そこに登場するのが梅守が師匠と仰ぐ岡本亮さんである。
「そのときは朝ご飯の仕込みも全部自分でやっていたので、寝るのが25時で、起きるのは4時、5時。これを続けたら体を壊すと思いました。そこに救世主、私の師匠の岡本さんがやってきてくれました。もともとここの建築士さんを紹介してくれたのが師匠だったので、建物ができたとき見に来てくださったんです。
それでサウナに入ってもらったら、『木もそうだし、この燃やし方じゃここでは燃えないよ、そりゃ時間がかかるわけだ』と笑われました。岡本さんは、この宿のオペレーションをやるにあたり、『薪ストーブや宿泊以外のできることは俺が作ってあげるから、梅はまず宿のオペレーションに専念しなさい』と言われました。そして、薪の運び方、準備、保管、火をつける手順や、それぞれの目標時間までマニュアル化し、おかげである程度、宿のオペレーションも落ち着きました」
オペレーションが安定すると、梅守も次第にサウナの魅力にとりつかれていった。
それは思わぬ“自分への気づき”につながっていく。
「薪のサウナは必ず30分に1回ぐらい薪をくべないといけないのですが、その間にお客さんといろんなことを話すことができます。それってすごく重要な事なんです。だから『サウナで長いことしゃべらないなら、火入れに行く意味がない』とスタッフに言っていたくらいです(笑)。
うちのサウナでは、安全のために薪はスタッフが入れるので触らないでくださいと案内しているのですが、ある日、自分でどんどん薪を入れていたお客さんがいました。ただ、私たちは、広葉樹は蓄熱するため、針葉樹は温度を上げるため、と木の種類によって使い分けをしています。でも、その人たちは広葉樹ばかりくべていた。私はこの村で、あのおじいが腰を曲げながら、汗だくで薪を割って運んでくれた姿を知っている。だから、薪も大切にしてほしいし、そこまで過剰に燃やさなくても楽しめるんじゃない? って思ったんです」
温度の高さが良いサウナの絶対条件ではない
「そのとき、うちのサウナは熱さが売りじゃないということに、私自身も気が付きました。