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連載サウナ人生、波乱万蒸。

2021/10/12

 もちろん間伐材を薪として利用した方が森林再生になるという考え方もあるので、どちらがいいとか悪いという問題ではありません。ただ、うちのサウナは、丁寧にじっくり1本の木を味わう暖かさを楽しんでもらいたい。ゆっくりゆっくり暖かくなっていくにつれて、感覚を取り戻していく感じを体験してもらいたいんです。私にとってサウナって、老若男女関係なく、人間が裸で自然に還る、よりフラットになるための装置みたいなものと思っています。だから、サウナは熱いのがいい、水は冷たいのがいいっていう単純なことではないのかなって」

 ume,saunaに入っていると、ゆったりとした時間が流れ、やがて自分が人間本来の姿に戻っていく感覚を受ける。そして雄大な山並みに抱かれる外気浴は、そこにいる自分の存在すら忘れさせてくれる。

 
部屋の冊子にある神話学者ジョセフ・キャンベルの言葉。

 

生き物の一部としての「人間」に戻れるのが、うちのサウナ

「サウナの中って、人の感覚が、自然によってもう一度目覚める卵の中のようなイメージなんです。あの薄暗い空間で肉体が勝手に反応する。ここにいると自然の中には不完全なものや不十分なものがたくさんあることがわかります。足がないカマキリが歩いていたり、もうすぐ死んでしまうセミがいたり。それは取り立てて大変な事態だと思わないのに、人間に置き換わると、生きることや死ぬことに対して少し感覚が変わってしまう。自然の生き物の一部としての『人間』に戻れるのが、うちのサウナだと思うんです。

 私の師匠がよく言うのですが、Google先生に聞いたとて、多分わかってるような気になってるだけで、世の中で起こっていることにはわかってないことも山ほどあると思うんです。自然の中では、すべてが平等で、人間が偉いなんてことは1ミリもない。『ただ、ここにいる存在』になっていく時間があるといいなと思って、この場所を運営しています。」