村の人たちが楽しいと思える時間を作る
彼女がume,yamazoeに込めた想いとは。
「私はここをいろんな人が一緒に存在してなじむような空間にして、自然発生的なコミュニケーションを生んでいきたいと思っています。この村に来た時、自分の友達を呼んで、村のおばあちゃんたちと料理を作るのがすごい楽しかった。今はそのおばあちゃんたちがうちに野菜を持って売りに来てくれて、お茶を飲んで『あんたの顔見たらすっきりしたわ』って帰っていく。
うちの妹の病室で一緒だった子たちは、妹以外はみんな亡くなっています。そういう子たちにとっての食べる時間と同じように、村の人たちが楽しいと思える時間を作ることに、この場所が寄与できるならいいなと思って。自分がやってきたことをつなぎ合わせていったら、今のコンセプトになりました」
宿泊棟の裏の小さなスペースに立つサウナ小屋、ume,sauna。
もはや宿には欠かせない存在のume,sauna誕生のきっかけは意外な所にあった。
「もともと露天風呂を作る計画があったんですけど、お金がなくて断念していました。そこで、露天風呂と同じように、人が服を脱いで開放的に自然を感じられるような何かができないかと考え、そういえばサウナって最近よう聞くな、サウナ作ろうかな程度の思い付きでした(笑)。
そして、2019年の11月ごろ、友人にべべちゃん(The Sauna支配人の野田クラクションべべー)を紹介してもらったんです。それでThe Saunaに行ったら『サウナってすごい!』ってなって(笑)。建設費300~400万ぐらいなら、自分の貯金とクラウドファンディングで賄えるかもしれないと、うっすら思い始めました。初めてサウナに入ったのが11月中旬で、2020年1月の年明け早々にクラファンを開始して、4月12日ぐらいから作り始めて2週間ぐらいで出来上がりました。べべちゃんも泊まり込みで手伝ってくれました」
サウナの素人がサウナ番をすることに
「でも、作ったはいいんですけど、サウナにたった1回入っただけの素人がオペレーションをやるわけです。宿のオペレーションもままならないのに、火のつけ方もわからなくて。べべちゃんには『YouTube見たらわかるから』って言われて見たのですが、『細い木から太い木の順に組んでいって、真ん中に着火剤置いて火つけたら、ぼって燃え始めるから』って言われても、その通りにできるわけがない(笑)。
木の状態が良かったらという条件があったんですけど、そんな基本的なことも知らないので、ただの雑木を近所のおっちゃんから買って、火入れに2時間半もかけてました。毎日毎日火が入らんかったらどうしようとか、温度上がらんかったらどうしようって、お腹が痛くなる思いで、朝7時開始のサウナなのに、4時半ぐらいから火入れを始めていました」