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2021/10/11

岸田首相と台湾、中国のつながり

 岸田家が台湾、満州でそれぞれ築いた事業と莫大な財産は、敗戦で全て失われた。

 正記の長男で文雄の父・岸田文武(1926~92、衆議院議員)は旧制東京高等学校、東京帝国大学法学部へ進み、商工省へ入省。文雄ともども、自宅のある東京・穏田(原宿一帯)で青春時代を過ごしたので特筆すべき台湾、満州体験はない。

 文雄は1993年、衆議院議員に初当選して以来、自民党の「日本・台湾経済文化交流を促進する若手議員の会(日台若手議連)」の一員として安倍晋三らとたびたび訪台し、総統の李登輝(1923~2020)らと交流を重ねて台湾理解を深めた。今回の総裁選期間中も、中国を念頭に人権問題担当官ポスト(総理補佐官)の新設を提案し、台湾の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入申請について「歓迎したい」と発言している。

1994年、台湾総統府を訪れ李登輝総統に拝謁する岸田文雄(中華民國國史館台湾文献館より)

 一方、所属派閥の宏池会(岸田派)は元来、親中派議員が多く、文雄は長らく、親中派議員筆頭格の古賀誠(81、元宏池会会長、自民党幹事長)の側近だった。また文雄は現在、広島県日本中国友好協会の会長、日中友好8団体の一角・日中友好文化交流促進協会(JCCEPA)の会長代理を務めている。

 文雄はホームページに「権威主義的体制が拡大する中で、台湾海峡の安定・香港の民主主義・ウイグルの人権問題などに毅然と対応。日米同盟を基軸に民主主義、法の支配、人権等の普遍的価値を守り抜き、国際秩序の安定に貢献していく」と優等生的なメッセージを載せている。単純に親台/親中で割り切れるものでもないだろう。だが「プリンス」の仮面を脱ぎ捨て、山っ気の強い戦前の岸田家の男たちのように、アツい一面を見せられれば岸田首相の物語も面白くなりそうだ。

(文中一部敬称略)

参考文献:
●書籍
『大連・旅順歴史ガイドマップ』(木之内誠・平石淑子・大久保明男・榎本雄一著、大修館書店)
『満州国の首都計画』(越沢明著、日本経済評論社)
『図説 「満洲」都市物語』(西澤泰彦著、河出書房新社)
『図説 満州帝国』(太平洋戦争研究会著、河出書房新社)
『滿蒙と滿鐵』(南滿洲鐵道株式會社)
『岸信介の回想』(岸信介・矢吹一夫・伊藤隆著、文藝春秋)
『增訂版 臺灣歷史地圖』(國立台灣歷史博物館、遠流出版公司)
『成爲臺灣人: 殖民城市基隆下的民族形成』(Evan N. Dawley著、國立臺灣大學出版中心)

『坂の上の雲(1)』(司馬遼太郎著、文藝春秋)

 

●ウェブサイト、ブログ
中華民國 國家圖書館 臺灣記憶
中華民國 國史館臺灣文獻館文獻檔案查詢系統
「岸田文雄総裁選特設サイト 声をかたちに。信頼ある政治」
「新浪博客@清流一叶的博客 昔日大连的百货店」
「新浪博客@鼠曲草的博客 大连地理专栏:天津街百货大楼13.6.30」
Google Earth 奉天 探訪(調査人イチオカ編)

 

●論文、記事
「中国東北部の多民族都市・満州奉天(現瀋陽)及びハルピンにおける鉄道付属地の開発に関する考察」(川村邦夫著、『創造都市研究』第20号)
「“在満日本人”か、“日系満洲国民”か-“満洲国”における日本人の政治参加」(塩出浩之著、『琉球大学人文社会学部政策科学・国際関係論集』)
「岸田首相の親族、連なる政治家たち 宮沢喜一元首相も」(『中国新聞デジタル』2021年10月5日配信)
「鋸琴一甲子風景成絕響 基隆自立書店老先生陳上惠往生」(『聯合報』2021年1月23日配信)
「日本準首相對台淵源曝光!岸田文雄曾祖父『吳服店』樓房至今還在基隆」(『風傅媒』2021年9月30日配信)
「岸田文雄祖父的几久屋百货店,怎么扩建为大连百货大楼的?」(『腾讯新闻』2021年9月30日配信)
「沈阳民主广场奉天输入组合旧址」(『每日头条』2018年1月10日配信)

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