YouTubeは多種多様な経験談の宝庫
──恋愛マンガではなく、映像制作会社を舞台にした理由は?
いつまちゃん 最初期の構想では風俗嬢の心ちゃんを主人公にして、女性心理を描こうと思っていたんです。取材もたくさんさせていただいたのですが、双子の妹から、「あんたは想像で描くよりも、自分が体験したことと見聞きしたことから着想を得て描くほうが向いている」とアドバイスをもらい、自分が働いていた映像制作会社を舞台にストーリーを組み立てることにしました。私の漫画家デビューを決めた天啓とも言える一言だったので、この言葉は作品にも違う形で出てきます。
──現場取材もされているのですか?
いつまちゃん たまに現場取材もしていますが、YouTubeも参考になりますね。多種多様な経験談の宝庫なので。
たとえば最近、松田くんの元カノの華ちゃんがパリ留学から帰ってくる話を描いたんですけど、YouTubeを開けば実際にフランスに留学している学生たちが「言葉をオブラートに包む文化がないから最初は傷ついた」とか「効果的だった言語の学習方法」とか「コロナ禍での帰国の大変さ」など、貴重な体験を自分の言葉で発信してくれてるんですよ。友達のお土産話を聞くような気持ちで異国の空気感を感じて「華ちゃんだったらどんな経験をしてきただろう…」とオリジナルストーリーを新たに考えましたね。
「頑張った自分」は何にも代えられない一生ものの誇り
──マンガの連載が長期化し、ドラマも大人気でした。マンガを描き始めた頃と比べ、ご自身の中で何か変化はありましたか?
いつまちゃん 変化しましたね、自分に自信が持てるようになりました。経済面も安定しましたし、自己肯定感が育まれたおかげで恋愛面でも相手に振り回されなくなりました。昔は卑屈すぎて「若い女じゃなくなったら私になんの価値があるんだろう…」と歳をとることを恐れてましたが、今は全然ですね。「20代のうちに2回もドラマ化できた!悔いなし!30代も頑張るぞー‼」と朗らかな気持ちです。もし以前の私と同じように自分に自信が持てなくて苦しんでいる方がいるなら、なんでも良いので少しずつ自分の自己実現欲求を叶えてあげるのがおすすめです。努力はしんどい行為ですが、結果はどうであれ「頑張った自分」は何にも代えられない一生ものの誇りになり、生きやすさを授けてくれますよ。
──好みの分かれる作品なので、アンチもいらっしゃるのでは……?
いつまちゃん いますね。初めて複数人から中傷を書き込みされた時はショックで寝込みました。アンチスレとか最初できたときは気になっていちいちチェックしていたんですけど、苦しいだけで得るものが何ひとつないので、見なくなりました。でも最近妹が見たみたいで「なんか見てて元気出た」と笑ってて、それが意味わかんなすぎて私も笑っちゃいました。