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渡辺満里奈と工藤静香に抱いた同質の感覚

 久々ともいえる「満里奈の所信表明」だ。さあ、今度は台湾でいくわよ、ということなのである。かつては「小沢健二」や「フランス映画(単館上映系)」などで「いくわよ」の姿勢を見せていたわけであるが。さて、一体どこに「いくわよ」なのか。どこなのかははっきりとわからないが「小沢健二」「フランス映画」「台湾」が同一の目的地へ向かっていることは確かだ。

 と、かなり手厳しい。90年代以降展開された、ナンシー関による一連の「渡辺満里奈批判」によって、当時の私も評価を手厳しい方向に変えたし、ここでの文章も、そのときの「渡辺満里奈評」を引きずっている。私にとって、ナンシー関はそういう人なのだからしょうがない。渡辺満里奈には、相手が悪かったとしか言いようがない。

 渡辺満里奈と同様に、アイドル出自でサブカルチャー方面との連携を強めた先輩に小泉今日子がいる。ただしキョンキョンは、好き勝手やっているうちに、サブカル人脈が吸引されていった(ように見えた)のに対して、渡辺満里奈は、それそのものが目的化している印象を受けた。

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 おニャン子後期の主要メンバーである渡辺満里奈と工藤静香には、先に書いたような「おニャン子にいることの居心地の悪さ」を感じたものだ。『夕やけニャンニャン』で楽しく歌い踊りながらも、目は決して笑っていないという感じ。その目線は、おニャン子ブームの終焉をクールに見据え、次なる展開を模索する眼差しでもあった。

【後編を読む】「『90年代』と書いて『ドリカム』と読む」1990年代のEPICソニーを支えた音楽グループに必要だった意外な「チャームポイント」とは?

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