だから感染予防は徹底的にやっていました。店の者が外から入るときは手洗い、手指消毒を徹底させました。店内の換気を促すようサーキュレーターも15台設置した。同じビルのスナックのママさんが店全体を抗菌コーティングしたと言っていたので業者を紹介してもらい、うちの店も20万円かけて隅々までやってもらいました。
人出は激減、自腹で店に弁済した人も
社長は行政の指導や要請には全面的に協力するという姿勢で、区役所が主催する感染予防の勉強会にも参加していましたが、ガイドラインに沿った商売じゃ儲からない。無視して感染者を出したら一大事。八方塞がりでしたね。
8月下旬頃から少しずつ風当たりが弱くなった。行政がやる対策会議でのことなんですが、飲食業や水商売を介しての感染は大きく減っている。むしろ会社員、家族間感染、高齢者の施設での感染が多い状況である。繁華街で働いている人たちは槍玉にあげられてしまったこともあって、かなり神経を使っている。感染対策に最も力を入れているのは歌舞伎町じゃないかと思う、と区役所の幹部が言っていました。
でも世間一般の人は我々の努力や実態を理解してくれないんですね。歌舞伎町は危ないというイメージが固まってしまい、人出は激減でしたよ。
キャバクラ同様に批判の矢面に立たされていたホストクラブも大変だったみたいですね。対面のビルに結構大きなホストクラブがあって、そこのお兄ちゃんたちとは顔馴染みなんですが最悪のときは客の入りが9割減だったと言っていた。その上、客の売掛金の回収もままならなかったらしい。自腹で店に弁済した人もいるようですね。
毎月100万円、150万円と稼いでいた売れっ子でも月収25万円
歌舞伎町には水商売以外にも多くの商売があるけど、それらのところも閑古鳥が鳴いていましたね。キャバ嬢やホストがよく行く美容院は7月に閉店しちゃったし、飲食店にお酒類を入れている酒屋さんも閉じちゃったところがある。普通の飲食店さんも大打撃だったみたい。蕎麦屋、洋食レストラン、定食屋、寿司屋、喫茶店なんかも客の入りは以前の半分にもならなかったみたいですね。自分もたまに寄っていた居酒屋さんは1日の客が10人にもならない日があったと言っていました。
その人たちにしてみたら歌舞伎町全体が夜の街とひと括りにされたのは納得できなかったと思う。とばっちりみたいなものでしょ。業種に関係なく歌舞伎町の皆さんにはお世話になっているので、店の若い連中には少しでも金を落とせと言ってました。自分も食事したり買い物をするときは歌舞伎町の中で済ますようにしていました。
うちの店は7月、8月が底でしたね。売上で言うとざっと7割減。雨の日は9割減という悲惨なものでした。毎月100万円、150万円と稼いでいた売れっ子でも25万円ぐらいしか稼げなくなってしまいましたね。
もうみんなの顔が暗くなっちゃってさ。仕事で大事なのは楽しむこと。自分が楽しむと、お客さんも楽しくなってくれる。だから笑顔を絶やさないというのが店の方針なんですが、自分も女の子たちもそんな余裕はありませんでした。大丈夫なのかな? って不安が大きくなっていった。