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「自分はそこまで堕ちるとは思っていなかったけど…」キャバクラ店員の証言で振り返る新型コロナが歌舞伎町に与えた“恐るべきダメージ”

『今日、ホームレスになった 大不況転落編』より #1

2021/11/06
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年収は750万円近くまでUP

 今のところに移籍したのは15年の暮れです。新しく立ち上げる店の責任者でやってほしいとスカウトされたんです。月給は2割増し、店の売上に応じた利益分配も付けるという破格の条件だった。田舎で燻っていた自分には歌舞伎町ドリームという感じです。

 移籍した運営会社は新宿一帯にキャバクラ4店、ガールズバー、ダーツバーなども展開していて社長はよく「歌舞伎町で天下を取ろう」って言っていた。

 その頃は景気が回復してきたと言われていたから店の売上は右肩上がりで伸びていった。トップクラスの女の子だと毎月150万円以上稼いでいましたね。そこそこの容姿で話が面白かったらアルバイトの子でも1日3万円ぐらいの日当になっていたもの。

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 店長の自分だと月給は60万円でした。これに売上の数パーセントが店に戻され役職に応じで分配していました。ヒラのボーイだと数千円なんですが自分だと5万円上乗せられたこともありました。自慢するわけじゃないけど去年(19年)までの4年間はずっと750万円近い年収でしたよ。

 ところがコロナウイルスで一気に不景気風です。特に国、東京都、マスコミが夜の街と繰り返し伝えたでしょ。その象徴として厳しい批判に晒されたのが歌舞伎町なんですよ。

ウイルスは目に見えないから怖い

 夕方のニュースには小池都知事が毎日出てきて「夜の街、夜の繁華街への外出はお控えいただきたい」と言っていたでしょ。地方の人は東京に出張しても新宿には行くなと言い含められて来ている。都内で働いている人も歌舞伎町で飲み食いするなと強く言われている。新聞にもこんなことが載っていた。

 客足がより少なくなったのは6月です。キャバクラ、ホストクラブなど接待をともなう飲食店の関係者が感染者の4割を超えたという報道があってガクンと落ち込んだよ。ネットにはキャバクラやホストクラブなんていらない、潰れてしまえなんて書き込みがあったし。元々、歌舞伎町のイメージは良くない。そこに夜の街=歌舞伎町、飲み屋=歌舞伎町みたいな言い方をされたし、歌舞伎町だけで感染者が出ているみたいな言い方もされたからね。歌舞伎町を封鎖しろなんてほざいていた文化人もいましたよ。

 悪いイメージ、怖いイメージが強いせいで言われちゃったところもあると思うけど、一方的に名指しして非難するのは良くない。みんなフラストレーションが溜まっていてイライラしていたんだろうな。誰かが悪者にならなきゃいけないんだったら歌舞伎町が悪いでいいじゃんという感じで、いじめや無視をする集団心理みたいなものだったと思います。

 だけど我々だって手をこまねいて何もしなかったわけじゃないんですよ。俺たちだって生身の人間です、誰も病気になりたくないし死にたくもない。健康でいたい。

 女の子たちも他のスタッフもウイルスは目に見えないから怖いと思っていた。お客様にうつすことを考えたらもっと怖い。