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「自分はそこまで堕ちるとは思っていなかったけど…」キャバクラ店員の証言で振り返る新型コロナが歌舞伎町に与えた“恐るべきダメージ”

『今日、ホームレスになった 大不況転落編』より #1

2021/11/06
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お客さんのなかにはコロナに感染したという人も

 出勤調整も少しずつ元に戻しています。幸いなことにうちの店は女の子もスタッフもコロナに感染した人はいなかった。

 もう商売替えしようかなんて悩んで休みを取っていたスタッフも、やっぱりここで働きたい、頑張るから戻りたいと帰ってきた。

 店の者は無事でしたが常連のお客さんのなかにはコロナに感染したという人が数人いました。もう全快したからうちに遊びに来たわけですが、闘病中の話を聞くとコロナというのは本当に怖い病気なんだなと思います。

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 40代後半のお客さんは味覚障害がひどかったということです。何を食べても味がしない、美味しくない。最悪の時は、何を食べても口の中に泥か粘土があるようだったと言っていました。

 50代半ばで中古車販売の会社を経営している社長さんは、社員たちには感染しないよう口を酸っぱくして言っていたのに自分が感染して面目が立たなかったと笑っていた。この人はウイルス検査で陰性になって退院できたものの2週間近くは倦怠感がひどかったそうです。元気なときは10分もあれば出来ていたことが30分もかかったということだった。ずっと病院にいてベッド上での安静だったから足の筋力も落ちてしまい、歩くのも辛かったそうです。半月ほどリハビリをしてようやく元に戻ったと言っていた。

©iStock.com

 女の子たちが言うには、馬鹿っ話と法螺話しかしなかったおじさんが急に真面目な話をしだしたり、両親や家族は大丈夫なのかと心配してくれたりと、内面に変化があったお客さんも少なからずいらっしゃいます。それだけ大変だったんですね。

こういうときだからこそ、肩を寄せ合える場所でありたい

 世間一般の考え方では収束宣言も出ていないしワクチンの接種も進んでいないというのにキャバクラ通いかよと眉をひそめる人も多いと思う。だけどこういう時期だからこそ言いづらいことや自分の話したいことを何でも受け入れてくれる場所が欲しいんだと思います。

 仕事のこと、収入のこと、健康のこと、将来のことなどに不安を抱えていると思うけど、そういうのを少しでも忘れたいっていうのもあるんじゃないんですかね。寂しい人が多いんだと思う。

 偉そうなことを言うつもりはないけど、居場所というか息抜きの場所というか。こういうときだからこそ肩を寄せ合える場所でありたいと思います。

 歌舞伎町にはいろいろな人間が吸い寄せられてくる。飲みたいな、自己顕示欲でお金を使ってみたい、いい扱いを受けていい気分になりたい、ちょっとした下心がある、人に言えないような楽しみをしたい。こういう人間が来るところです。

 歌舞伎町で働いている夜の街関係者だって同じ。ここで一旗揚げたい、金を稼ぎたい、借金を返さなきゃならない、水商売が性に合っている。歌舞伎町があったから生きてこられたという人もいるんですよ。

 よからぬ思いと期待を持って遊びに来る人。歌舞伎町に人生を懸けて流れてきた人。ここは誰でも、どんな事情があっても受け入れる。

 それが歌舞伎町、そういう街ですから。

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