文春オンライン

「そもそも心って何でしょう?」対話不足になりがちな、コロナ時代の“心の伝え方”

ブレイディみかこさん×東畑開人さん 特別対談

note

ブレイディ 午前4時の自分を、個が脆弱な日本では普段出しにくいんじゃないかと思います。自粛警察は日本独特のものだし、子供を乗せたバギーで階段を上ろうとすると、イギリスでは先を争って人が手伝うけど、日本では全くないから。

東畑 ただ、いまの学生たちを見ているとすごく優しいんです。傷ついている子がいたら、そっとしておくとかセンシティブな話題には触れないとか。逆に言うと、他者に手を差し出すことで、傷つく可能性に怯えているのかもしれません。確かに「余計なことするな」って言われる怖さがある。

ブレイディ 他者の内面的な話にたじろぐ感覚はわかります。周りのイギリス人はパブで会ったばかりの人にも離婚事情をべらべらしゃべって、互いに踏み込むような人たちですが(笑)。

ADVERTISEMENT

©Shu Tomioka

対話不足になりがちな社会で…

東畑 1960年代の研究によれば、台湾ではプライベートな悩みを持つこと自体が罪悪感を引き起こすとされていた。だから、家族や精神科医には言わず、仲のいい友達にだけちょっと話す、すると、うつになった時は体に症状が出るという傾向があったんです。

ブレイディ 面白いですね。確かに私もそうでした!

東畑 欧米人の場合、うつは気持ちが沈むという症状で出るそう。東アジアでは心の悩みってどう接していいかわからないけど、体に出たら「こういう漢方あるよ」「マッサージ行ったほうがいいよ」とかケアしやすいのかもしれません。

ブレイディ カウンセリングの現場で東畑さんがなさっているのは『他者の靴を履く』こと(エンパシー)に近しい気がします。内面の声をきちんと聞くことのつらさもあるんでしょうか。