「私には会わない方がいい」医療ソーシャルワーカーの言葉
——取材を重ねる中で、具体的なエピソードを練っていった形ですか?
佐倉 そうですね。取材させていただける方や病院を探したのですが、ちょうどコロナ禍の時期と重なってしまったのが大変でした。
やっぱり本を読むだけでは分からないことは多いです。実際に医療ソーシャルワーカーさんの話を聞くうちに、具体的な感覚も教えてもらえるので、毎回取材は刺激的です。
——刺激的ですか? どんなところが?
佐倉 取材させていただいた医療ソーシャルワーカーさん自身が、「私には会わない方がいいんだよ」と言っていました。例えば、骨折して入院しても、治って退院して普通に生活に戻れる人は、ソーシャルワーカーさんとは一切会わないで済んでしまう。
医療ソーシャルワーカーさんの存在があまり知られてないのって、日常生活に戻る上で困ったことができた時にはじめてお会いする職業だからこそと思うと、その言葉に、なるほどなって。
まるで落語みたいに…イメージと違った「断酒会」
真並 私は、アルコール依存症になりかけている女性が登場する第2話の取材のために、断酒会に行かせていただいたのが印象に残っています。
佐倉 たしかに。断酒会に行く前は、雰囲気が分からなかったです。
それまで、「アルコール依存症」と聞くと、私の中ではテレビとか、それこそ昔の創作物に出てくるようなイメージが強かったんですね。でも実際の参加者の皆さんは、一般的なアルコール依存症のイメージと違って、和やかで柔らかな感じだったり、語ることはヘビーなんですけれど、落語みたいにお話しされる方もいたり。
好き勝手にお酒を飲んで、身体的にも精神的にも悪い状態になっている――みたいなのが多分、ごりごりに固まったアルコール依存症のイメージだと思うんです。でも、本当は本人も、飲みたくないと思っている、飲んではいけないとすごく思っているっていうのを知った時に、多分、私が想像している以上の辛さがあるなと思いました。アルコール依存症の方々がなんで飲むのかってことを、そもそも考えたことがなかった。