新型コロナウイルス感染症により、かつてなく注目が集まった医療現場。月刊アフタヌーン(講談社)で連載中の「ビターエンドロール」では、病院に勤務し、病気や障害によって生活に問題を抱える人の社会福祉支援を行う医療ソーシャルワーカーの活躍が描かれる。
前編では、著者の佐倉旬氏と担当編集者の真並紗樹子氏が、取材の中で出会った医療ソーシャルワーカーや「断酒会」への参加を通じて自覚した偏見を、創作に生かすまでの矜持について伺った。
佐倉氏は「なんにでも怒っているし、怒って描いていたい」と話す。後編では、佐倉氏の作品の根底にある怒りや願いに触れていこう。(前後編の後編/前編を読む)
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「“本当に困ってる”って何?」SNSでの発信を見て…
――第3話、生活保護の回で「“本当に困ってる”って何?」というセリフに、ドキッとしました。今回インタビュアーをしている私自身は普段看護師として病院で働いているので、患者さんが困っていると訴えることが「本当」かどうかジャッジしようとする風潮、確かに医療の中にあるなって。
佐倉 医療ソーシャルワーカーさんの直面する問題を調べていくと、自己責任論みたいな話も絡んできます。
SNSで、生活保護の方に「テキトーに生きてきたから悪いんだろ」と言っている人もいます。
それを一概に、「そんなこと言うな」って責めることは絶対にできないと思ったけれど、でもそれではいけないとも思う。答えは分からないけど描こう、入れようという気持ちはありました。
社会って、毎日24時間、健康体で、8時間勤務ができて、朝から夜まで働けて、元気で家事ができて、という人を想定して作られている。そこから一歩外れてしまうと、一気に生きることが困難になる。普通の生活っていうけど、「普通」って厳しくないですか。