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「魅力度ランキング」最下位と報じられたけど…ガルパン、乃木坂の「聖地」茨城のWEBドラマが意外なヒットのワケ

「魅力度ランキング」最下位と報じられたけど…ガルパン、乃木坂の「聖地」茨城のWEBドラマが意外なヒットのワケ

CDB

2021/11/20
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 キャンプなどで山奥の森林に足を踏み入れた時、自然の森が持っている濃密な「気配」を感じたことのある人は多いだろう。

『となりのトトロ』の舞台となったのは所沢の森だが、優れたアニメーターである宮崎駿はその「気配」を絵に描き写すことで世界的なアニメを作り上げた。『県北高校フシギ部の事件ノート』は、アニメで描くには天才的才能が、CGで構築するには巨大なメモリと費用が必要な「自然」というビッグデータを、撮影スタッフの手持ちカメラで鮮やかにドラマに組み込むことに成功している。

 ダークグリーンの森林と、高校生たちの顔の若々しい血色は、まるで入念に色彩設計をしたように映像の中で鮮やかなコントラストを描く。自然の永遠と、青春の瞬間が画面の中で交差する物語は、まるで大林宣彦の尾道三部作の茨城版を見ているようだ。

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 実はこの「茨城の風景情報をバックデータに活用する」という手法は、『県北高校フシギ部の事件ノート』以前からある。よく知られることだが、アニメ『ガールズ&パンツァー』は舞台を茨城県大洗町に設定し、その風景をアニメ映像に取り込むことでファンたちの「聖地巡礼」を呼び込んだ。美しい映像で知られる乃木坂46のMV『ガールズルール』『太陽ノック』『路面電車の街』なども茨城県で撮影されたものだ。

 渋谷のスクランブル交差点が撮影のメッカであるのと同じように、茨城県は濃密で強い情報を持つ「映像資源」の宝庫なのだ。

クランクインの日(茨城県提供)

地方版Netflix? 大きく「化ける」可能性

『県北高校フシギ部の事件ノート』は作品自体の出来のよさに加えて、自治体資本→WEB公開という制作の形態が持つ可能性を感じさせる。県が持つ映像資源を都会に売り出すだけではなく、茨城県自身が「映像資源の生産者」になりうることを示した作品でもあるのだ。

 韓国語ドラマ『イカゲーム』が配信サービスNetflixで世界的ヒットを記録したことが報じられているが、Netflixドラマは制作費を負担する代わりに著作権や版権をNetflixが所有するシステムだ。この『県北高校フシギ部の事件ノート』もNetflixと同じように、茨城県自身が公費で制作し、県がコンテンツホルダーになっている。

 NetflixとちがいYouTubeで無料で見られる上に、広告も入れていないので、作品が多く再生されたからといって利益が上がるわけではない。だが、県自身がコンテンツを作り所有することの意味は大きい。作品のみならず、クリエイターやアクターは、将来的に大きく「化ける」可能性を秘めているからだ。

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