2021年のセ・リーグを制し、日本一をかけてオリックス・バッファローズと死闘を繰り広げている東京ヤクルトスワローズ。

 昨季は最下位だったチームの驚異の躍進。その大きな要因の一つに、村上宗隆や奥川恭伸らをはじめとした若手選手たちの成長が挙げられるだろう。プロ入り数年目でありながら、すでに球界を代表する選手といっても過言ではない成績を収める彼らは、どのように育成されたのだろうか。

 高津臣吾氏が二軍監督時代に著した『二軍監督の仕事』(光文社新書)の一部を抜粋し、紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

ADVERTISEMENT

◆◆◆

育成面で外せない打順もある

 打者の方はどうだろうか。とにかく機会を与えることが育成にそのままつながるわけだが、ヤクルトの二軍監督として「どうしても外せない」仕事がある。

 一軍に上がった時に、その選手がどんな役割を果たすのか。それを想像しながら打順を組む場合があるのだ。

©文藝春秋

 2018年のシーズンでいえば、村上は4番で固定だった。どんなことがあっても動かすことはない。これは僕というよりも球団の意志である。

 現状、村上は一軍に上がれば下位打線を打つことになるが、将来的にはヤクルトの屋台骨を背負って立つ選手であり、ファームの時点から4番が打席に立つシチュエーションを叩き込む。ファームは4番としての「帝王学」を学ぶ場所なのだ。

 村上はプロ1年目のシーズン、ファームで実力を発揮したが、万が一、打てなかったとしてもずっと4番に据えていた。それくらいの逸材なのだ。

©文藝春秋

 また、捕手の古賀は打席でどんなに結果を残そうとも、8番に固定している。なぜなら、古賀が一軍に上がった場合、間違いなく8番に入るからだ。二軍はDH制が採用されているものの、古賀には、次のバッターが投手であることを意識しながら打席に入るように話す。

 こうした形で、一軍と二軍は連動していく。

 組織としての連係が必要なのはこういう部分で、ここがブレてしまっては、チームとして機能していかない。

選手は時に覚醒する

 打者であればどの打順に置くか、投手であればローテーションに入れるかどうかが、球団から選手へのメッセージである。

 面白いもので、じっくり育てようと思っていた選手が、突如として化けることがある。