昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/11/23

 僕がアメリカでプレーしていた時期に、サンフランシスコ・ジャイアンツのマイナーにバスター・ポージーという捕手がいた。この捕手がとにかく打つ。2009年のシーズンなどは、マイナーで3割以上をマークし、「どうしてこんなすごいバッターをメジャーに上げないんだろう?」と不思議に思っていた。

 聞いたところによると、ポージーはジャイアンツにとって大切な選手だから、育成に必要な時間をマイナーで過ごしてからでないと、メジャーには上げないのだという。

手の成長をしっかりとチェックするシステム

 このアイデアを聞いて、なるほどと思った。アメリカの球団では、決して目先の一勝を追い求めて若い選手を昇格させることはせず、大きく育ててから引っ張り上げるのだな、と。

 それになにより、メジャーでは育成をするという発想がない。メジャーは戦える「完成品」しか求めていないからだ。

 ポージーは2010年に一軍に定着し、2010年、2012年、2014年のワールドシリーズ優勝に貢献。2012年には打率3割3分6厘で首位打者を獲得し、MVPにも輝いてジャイアンツの「顔」になった。

©文藝春秋

 しかも、ただマイナーに置いておくという発想だけではなく、選手の成長をしっかりとチェックするシステムもアメリカでは機能していると思った。

 球団のジェネラル・マネージャー(以下、GM)を筆頭に、マイナーにはディレクター、育成担当の巡回コーチがいるなど、選手を育てる仕組みがある。

技術ばかりを仕込めばいいというものではない

 僕は、ここにアメリカ野球の豊かさを見た。選手の育成のために、多くの人間を雇用できる余裕。選手を昇格させるにも、行き当たりばったりではなく、マイナーのコーチ・監督からディレクターに報告が上がっていき、それが最終的にはメジャーリーグのGMに集約され、昇格が決まっていく。

 二軍監督となったいま、僕としては日本の球界でも、こうした発想をぜひとも取り入れてほしいと思っている。

 ヤクルトにも「ディレクター」という役職があり、選手たちの育成を見守り、そして社会人としてしっかりと生きていけるように指導する。

 ただし、いまの時代は若い選手を預かるというのは、技術ばかりを仕込めばいいというものではない。SNS時代を迎え、プロ野球選手として恥ずかしくない行動も身につけなければならなくなっており、社会人としての常識も仕込まなければならない。スタッフ・指導者の仕事はたしかに増えている。

【続きを読む】「カウント0―0。投手と打者、どっちが有利だと思う?」高津臣吾監督がノムさんから学んだ“戦術的発想”の極意とは

この記事の写真(6枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー
z