神奈川県を中心に展開する書店チェーン・有隣堂のYouTube『有隣堂しか知らない世界』が熱い。「書店なのに全然かしこまってない」「MCのミミズクのしゃべりが流暢すぎ」「出てくる書店員が皆マニアックで沼」と評判を集め、現在は登録者数11.5万人(2021年11月30日時点)の人気チャンネルに成長している。

 他の書店系チャンネルの登録者数は、『丸善ジュンク堂オンラインコンテンツ』が1.5万人、『紀伊國屋書店チャンネル』が1670人。有隣堂だけ独走状態だが、開設当初は伸び悩んだという。それをどう巻き返したのか。MCのミミズクとは何者なのか。

 制作に携わる本社広報・秘書室の鈴木宏昭氏、渡邉郁氏、フリーの動画クリエイターとしてチャンネルをプロデュースするハヤシユタカ氏に話を聞いた。

ADVERTISEMENT

最初はさえないチャンネルだった

 

――YouTubeチャンネルを開設したのは2019年12月。現社長・松信健太郎さんの提案がきっかけだったそうですね。

鈴木 当時のYouTubeでは書籍解説が流行っていたので、そのジャンルで追いかけようとしたんです。でも、再生回数も登録者数もいまいちで。ハヤシさんに依頼し、2020年6月からリニューアルしました。

――初期動画は真面目な書籍解説なのに、リニューアル後はぶっちゃけトークと文具愛がメインで、かなり開き直った印象です。昨年創業111年を迎えた老舗書店としては、思い切ったチャレンジだったのでは?

ハヤシ 老舗だからこそ、今ウケるものを知らないといけない。このチャンネルをきっかけに有隣堂を知る人も多いので、その人たちを飽きさせず、チャンネル登録をしてもらうための見せ方はすごく意識しています。

 具体的には、無駄なトークを切ったり、スピーディに字幕を入れるなどの編集面ですね。それに加えて、テレビを通して僕が面白いと思った要素も反映させています。

――『有隣堂しか知らない世界』というチャンネル名は、もしやTBSの某トーク番組から?

ハヤシ そうです(笑)。あとは、以前tvk(テレビ神奈川)でやっていた『saku saku』という番組の影響もありますね。毒舌のパペットがMCで、木村カエラさんたちとその週のテーマを掘り下げてトークするんですよ。そういう独特の雰囲気がほしくて、このチャンネルもブッコローというMCを立て、書店員さんを出演者に迎える形にしました。