書店は“公然と推しを推せる”最たる職場
――内側からどうしても漏れ出てしまう……。
鈴木 そうなんですよ。「なんでこの本に販売用POP書いてるの? 費用対効果から見ておかしくない?」みたいなのはありますね。
――「これは確実に私情が入ってるよね?」という。
鈴木 書店員は、推しに熱くなりやすい人種だと思います。書店って実は、“公然と推しを推せる”最たる職場なんですよ。
たとえば小説コーナーには、東野圭吾さんや宮部みゆきさんなど、有名作家さんの作品がたくさんありますよね。そんな中、マイナーな作家さんの新刊がど真ん前に平積みされていたら、絶対にそのコーナー担当者の作為が働いているわけです。それで「このテーマを語らせるなら、あの人が詳しいかな」など、だんだん目星がついてくる感じですね。
有隣堂disをカッ飛ばす謎のミミズクMC
――MCのR.B.ブッコローさんは、有隣堂について「弱小書店」や「赤字企業だから新店は出ない」と言い放つなど、強烈な毒舌キャラですよね。こちらが心配になってしまいますが、有隣堂さんとしては大丈夫なんですか?
鈴木 わりとすんなりOKしています。動画はすべて、上層部のチェックなしで制作・公開しているんですよ。社長は「誰かを傷つけたり、迷惑をかけるなどがあれば自分が出ていくけど、あとはよろしく」というスタンスで、裁量は制作チームに任されています。ですから、私たちが「まぁ素直な発言だよね。これは面白いよね」という範囲内であれば、基本的にOKとして公開していますね。
ライバル書店のイベントも紹介する懐の広さ
――そうなんですね。でも、『イラスト紹介』の回を見て驚いたんですよ。開始早々、ブッコローさんが蔦屋書店のガラスペンフェアの告知をして、さらに岡﨑さんが「昨日そのフェアで買い物してきました!」と続けてますよね。普通の企業チャンネルは、競合他社の宣伝はしないと思うのですが……。
鈴木 あれは、「蔦屋さんもガラスペンやってるんだ~面白いね」くらいの感じで、動画内でお知らせしたんですよ。「このトークは蔦屋の利益になるからカット!!」などは考えなかったですね。
あとで聞いた話では、蔦屋さんのガラスペンフェアに行かれたお客さまは、「有隣堂のYouTubeでガラスペンを知りました」とおっしゃる方が結構いたらしいんです。我々は「逆にそれは面白い!」と思っちゃいました。
――大らかですね。動画のコメントにも「他店のイベントも紹介する懐の広さよ……応援してます!」というのがありました。
鈴木 ありがたいです。ハヤシさんはプロですが、我々は素人なので、逆に作り込んだり考えすぎると失敗するんですよね。
――今までに「これはやらかした!」という失敗回や、お蔵入りになった企画はありますか。
鈴木 ほとんどの企画はそのまま公開していますが、お蔵入りはありますね。
たとえば「左利きの人向けの文房具紹介」というのはダメでした。企画段階では盛り上がったんですが、いざ左利き用文具の現物を集めてみると、ごく普通なんですよ。