20年以上にわたり約2万件の刑事裁判を傍聴してきた裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火氏。その中から、忘れられない公判をあげてもらった。

 今回は、何度も「変装」してイベント会場などに忍び込み、裁判でも「ルパンじゃないんだから」とツッコミを受けた男について。いったんは裁判官から「人生の先輩」としての言葉を受け、再犯しないことを法廷で誓った被告人だったが、数年後のある日……。

©iStock.com

◆◆◆

ADVERTISEMENT

5年ぶりの再会「被告人はルパンでした」

 そして、2012年1月31日の東京地裁でのこと。

 その日行われる裁判の予定が書かれた公判開廷予定表を見ると、ある判決公判の被告人名にどこかで聞いた事があるような名前が書いてありました。知り合いでもないし、有名人でもないし、実名報道された事件の被告人でもないし、誰だっけな? と気になったので法廷に入ると、被告人は“ルパン”でした。5年ぶりの再会!

 主文は、懲役3年。裁判官が読み上げる判決理由によると、被告人は2011年7月7日に東京都江東区にある有明(コロシアム?)で行われていた文房具イベントの関係者控室に入ったという事件。またもや侵入です。

 裁判官は「様々な小道具で関係者を装い、計画的な犯行。懲役2年8月の前刑出所後、約1年半での再犯で犯罪への親和性が認められる」と指摘していました。またコスプレしてたんでしょうね。そして前回の裁判の判決をここで知る事になるとは。あの時はこれを最後にするって約束してたのに……。

 今回は判決だったので被告人の言い分は聞けませんでしたが、被告人質問では再犯しないと約束した事でしょう。

©iStock.com

さらに8年後、開廷表に見覚えのある被告人の名前!その罪名は…

 そして被告人の名前をすっかり忘れていた2019年12月25日。開廷表に見覚えのある被告人の名前が……。もちろん本人です。今回は約8年ぶり。

 罪名は建造物侵入。2019年7月30日に被告人が東京都江東区にあるティアラこうとうの楽屋に侵入したという事件。やっぱりイベント会場への侵入です。しかし、以前の裁判と違うのは今回は被告人が否認しているのです。

 この犯行日はバレエの発表会が開催されて、被告人は関係者しか入れない通路を通って楽屋に入ったけど、間違って入っただけという主張のようです。過去を知ってると「またか…」という気持ちにもなりますが、今までは素直に罪を認めていた被告人が否認してるんだから信じたいという気持ちもある訳です。果たして、どういう状況だったのか?