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「なぜ? これにいつ気づいた?」「ネタは何本あるんだ?」“3人目のバナナマン”と呼ばれる放送作家が“才能に驚愕”した芸人とは

『自意識とコメディの日々』より #1

2021/12/26
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バナナマンの衝撃

「お疲れ様!」

 1995年の6月頃、とあるお笑いライブの帰りに出待ちしている女の子が僕に話しかけてきた。その子はファンというより、いろんなライブに顔を出すお笑いオタク的な存在で、芸人に対してもつまらない時は「つまらない」とハッキリ言うから、その意見を結構参考にしていた。この日のライブで細雪はウケていたので「面白かった~」とさぞ褒められるだろうなと期待していたのだが、彼女は予想だにしない言葉を口にした。

「天才がいた」

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 一瞬、意味がわからなかった。少し冷静になって「あっ、俺のこと?」と思った。

「ねえバナナマンって知ってる?」

 またしても意味がわからなくなった。再び冷静になって、天才→俺じゃない→バナナマンということが理解できた。僕が初めてバナナマンを知った瞬間だった。

「今、ラママでめちゃくちゃウケてるの!」

 ラママといえば日本最高峰の若手ライブ。そこでウケているというのは東京のライブシーンでウケているとイコールになる。

「フローレンスの再来かと思った!」

 フローレンスとは、ネプチューンになる前の原田泰造と堀内健のコンビで、僕は直接見たことはないのだが伝説的に面白かったという噂を聞いていた。僕は個人的には当時の東京のライブシーンでネプチューンのコントが一番好きだった。「ネプチューンよりフローレンスの方が面白い」という人もいたので「ソロ時代よりバンド時代が良かった」的な私、昔知ってますスタンス人間の発言だとしても、相当面白かったのだろうと想像できる。

「一体、どんなネタをする人たちなんだろう?」

 バナナマンのことを教えてもらってから、ずっとモヤモヤした。今なら評判の芸人のネタはYouTubeで見られるが、当時はそんなものはなく、テレビのネタ番組も数少ないので、ライブに足を運ぶ以外、簡単に若手芸人のネタを見れる時代ではなかった。しかし、そのモヤモヤはすぐに解消される。