1ページ目から読む
3/3ページ目

 では、国内はどうだろうか。習政権はここにきて矢継早にさまざまな特色のある政策を打ち出した。学習時間などを制限する教育規制では学習塾がバタバタと倒産した。独占禁止法による巨大IT企業への規制、芸能界への課税強化や整風(綱紀粛正)の動き。さらには党の中央財経委員会で習主席が呼びかけた「共同富裕」の考え方だ。

 それぞれ個別の狙いと通底する政策という複数の流れがあり、簡略にまとめられないが、その目的が「社会のバラスト」の構築にあることは間違いない。

アメリカと中国の「共通点」

 20大を控え、中国の真の主役――最大人口層――を意識した政治環境の整備が不可欠であるのと同時に、中国が将来に亘り発展し続けるためにも巨大で勤勉な中間層というバラストを作り出す必要があるという思惑がここから見えてくる。

ADVERTISEMENT

 米中の対立では資本主義vs.社会主義と対比される両国だが、実のところ成長の行き詰りという課題では共通点が目立つ。バイデンが大統領就任直後から富裕層増税に取り組み中間層の重要性を訴えたことはまさに同じ文脈で説明される。

©iStock.com

 近年、西側各国でも最低賃金の引上げ議論が活発で、自民党総裁選では河野太郎氏と岸田文雄氏がそろって分配の重要性に言及したのは典型的だ。

 洋の東西、主義の違いを超えて政治は社会の安定のために、富が一部に偏ることに危機感を持ち、その修正に動く。格差を解消できなければ混乱は必至だ。

 中国はこれに強烈なトップダウンで対応し始めたのだ。かつて第2次産業と第3次産業のGDP比率を変更し製造業の高付加価値化、そしてデジタル経済の勃興を促したように、人工的かつ強引な手法でソフトランディングを試みている。

 資本主義が行き詰り革命へと向かう理論を掲げた政党が、いまは革命というハードランディングを回避するために政策を繰り出す。中国にはそんな皮肉な構図さえ見え隠れしている。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。