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炎上劇で改めて感じた、プロとしては自分の持ち場で頑張っていくしかないのよねという結論

結局、誰が「老害」をつくるのか

2021/12/16
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炎上劇を経て出た結論

 昔活躍したライターや著名人を若い人が知らないのもまた当然のことです。以前お笑いコンビ「EXIT」の兼近大樹さんが番組で「ドラゴンボールやプロレスの話題をされても若い人は知らないからついてこない。話を合わせるしかないのでダルい」という趣旨の話をして、これはこれで批判され、言わんでもいい「ドラゴンボール全巻もってます」とかいうダサい釈明をさせられるのも、メディアもエンタメも情報を常にアップデートしていかないと潮流にはついていけないんだよという当たり前のことを受け入れられない人たちがいっぱいいる、ということなのでしょう。

 翻って、いま高齢の石原慎太郎さんが作家として戦後の青春小説の随一の書き手として非常に人気があったことを、おそらく私のようなアラフィフの世代でも知らないんじゃないかと思います。私も教養として石原作品は読んでいますが、高度成長のころ、ちょっとワルい感じの若者たちがみずみずしい社会経験を通じて自らの葛藤を乗り越えていく妙味は、単なるノスタルジーを超えて「日本社会は高度成長という時代があった」というファンタジーすら感じさせるものです。それへの批判本の執筆で書評家として名を上げた豊崎由美さんの筆致や考え方が、個人の率直な感想なのだとしてもいまのネット社会では受け入れられがたいものと受け止められるのはある種当然で、これはもう仕方がないのだと割り切るしかないんじゃないかと思うんですよね。

 もはや紙の本よりも電子書籍やコミックス配信を読む「読書家」が市場の過半を占めるいま、ネットサービスでの告知宣伝を通じて文字活字をいかに読ませるかというマーケティング全盛に、そこへはキャッチアップしない書き手が率直にどう思っているのか再確認できて個人的には納得がいった炎上劇でしたし、プロとして持ち場持ち場で頑張っていくしかないのよねという結論が出て良かったなと思いました。

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炎上劇で改めて感じた、プロとしては自分の持ち場で頑張っていくしかないのよねという結論

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