開幕以来、快調に本塁打を量産し、先発ローテーションを守った大谷は、7月の球宴に史上初めてDHと投手の両部門で選出された。しかも、試合前日恒例の本塁打競争に出場し、翌日には「1番投手」として先発マウンドに立った。MLB機構がDHを一時的に解除する特別ルールを認め、両軍監督も大谷の「二刀流」でのプレーを歓迎した。ア・リーグの指揮を執ったケビン・キャッシュ監督(レイズ)は言った。「これは多くのファンが見たいと望んでいることであり、私も個人的に見たいと思っている」
実際、本塁打競争で飛距離140メートル以上の特大アーチを連発し、球宴では登板した両軍全19投手で唯ひとり、時速100マイル(約161キロ)を超える球速をマークした。全米中に生中継された「真夏の夜の祭典」は、大谷が紛れもないスーパースターの仲間入りを果たしたことを証明する2日間となった。
来季は50本塁打の大台も?
もっとも、周囲の喧騒をよそに、大谷は冷静かつ客観的に自分と向き合っていた。球宴での「二刀流」出場を含め、21年は成績だけでなく、トレーニング、休養の取り方など、年間を通してプレーすることが、将来的な「たたき台」になると考えていた。過去3年はリハビリが中心で、投打それぞれのメニューは確立していなかった。
メジャーの公式戦は、3時間の時差がある中での遠距離移動、ダブルヘッダーや20試合以上の連戦も珍しくない。エンゼルスが優勝争いから大きく脱落しても、「最後まで健康でプレーすること」と繰り返したのも、21年を実質的な出発点と位置付けていたからだった。将来的に少しでも長く「二刀流」を継続していくための準備を、シーズンを通して進めてきたと言い換えてもいい。
だからこそ、マドン監督は来季以降について、「今年これだけ打って、投げて、走ったのだから、来季も可能だろう」と不安視していない。21年に長期離脱した大砲マイク・トラウトや、勝負強いアンソニー・レンドンら中軸打者が22年に完全復帰し、主に1、2番に座った大谷に続く3、4番を固めれば、21年終盤に見られたような四球攻めで勝負を避けられることも激減する。となれば、50本塁打の大台に手が届く可能性も高まるだろう。