北九州在住の書店員・かぁなっき氏。彼は大学時代の後輩である映画ライター・加藤よしき氏とともに猟奇ユニット“FEAR飯”を結成し、その語り手を担当している。そんな彼の名を知らしめたのが、ライブ配信サービスTwitCastingで2016年から続けている「禍話」という怪談チャンネルだ。今なお収集を続ける膨大な実話怪談のアーカイブから繰り出される話は、ホラー好きたちの心を掴んで離さない。

 今回は、「禍話」の中から人気エピソード「祭り覗き」をお届けする。とある山陰地方を訪れた学生が偶然目撃してしまった不可解なものとは――。(全2回の2回目。前編を読む

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 カシャン

「あ!」

 タイミングがいいのか悪いのか、そこで3分が経ち、フィルターが落ちてきてしまった。「なんだよ~」そう愚痴りながら双眼鏡から顔を離し、目を細めて先ほどの方向を見るも、流石に遠くて様子はわからない。

 そのまま退散しようかとも思ったが、視界に入ったモノが妙に気になる……。Fさんはおもむろにリュックから自前の双眼鏡を取り出し、先ほど見た辺りを探していると、それは見つかった。

 集落だった。

 山腹の拓けたところに突如として現れた集落。

©️iStock.com

 それだけでもなかなかにFさんの好奇心は刺激されたが、次に目に入った場所に彼の目は釘付けになった。

 それは、その集落の少し離れたところにあった神社と思しき場所だった。しかも、その境内には紅白の幕が張られており、十数人ほどの男たちがなにやらお祭りのようなものを開いている。

 境内で円を描くように座った十数人の男たち。彼らは笛を吹いたり太鼓を叩いたりと、表情は見えなかったものの、真剣な雰囲気で催事に取り組んでいる様子だった。

「……ん、なんだ…あれ…」

 だが、すぐにFさんの興味はその祭りの奇妙な点に絞られていった。