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“きさらぎ駅”や“八尺様”を生み出した「洒落怖」スレッドブームは過去のもの!? ネット発の“怖い話”が生まれにくくなった意外なワケ

『21世紀日本怪異ガイド100』より #2

2021/08/08

 きさらぎ駅、八尺様、巨頭オ……。「2ちゃんねる」(現・5ちゃんねる)のオカルト板に立ち上がった「洒落にならないほど恐い話を集めてみない?」(通称:洒落怖)は、今もなお語り継がれる数多くの「怖い話」をこれまでに生み出し続けた。しかし、近年はかつてに比べ、オカルト板の利用者そのものが減少してしまっているという。

 いったいその理由は何なのだろうか。ここでは、気鋭の怪異コレクターとして知られる朝里樹氏による『21世紀日本怪異ガイド100』(星海社新書)の一部を抜粋。「洒落怖」盛衰の経緯を振り返る。(全2回の2回目/前編を読む)

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2001年~2010年のネット上における「怖い話」

 2001年。

 世紀末を乗り越え、新世紀が始まったこの年。ネット上では、数多くの怪異たちが登場する話が語られるようになりました。これらの話はネット上の文化として、多くの場所で「怖い話」と呼ばれています。

 2000年代、怖い話が語られる中心となったのは、日本最大の電子掲示板である「2ちゃんねる」(現・5ちゃんねる)でした。1999年5月に開設した2ちゃんねるには、同年7月にオカルト板が設置され、翌年の8月2日には「洒落にならないほど恐い話を集めてみない?」スレッドが立てられました。現在、ネット上で語られた恐ろしい存在や物語の総称として使われるようになった「洒落怖(しゃれこわ)」の始まりです。

 このスレッドの趣旨は実話でも創作でも自分が体験した話でも、誰かに聞いた話でもいいから、とにかく怖い話を集めて「究極の怖い話集」を作ることでした。そのため、初代スレッドから現在に至るまで、書き込まれた話の中にはさらに出典を遡ることができる話が数多くあります。このように、2000年代はこの洒落怖を含む様々な怖い話を語る掲示板があった2ちゃんねるを中心として、次々と名作が生まれました。

ネットの文章ゆえの特徴を持つ洒落怖の名作

 これらのネット上で語られた話の特徴として、文章によって語られる話であるため、口承で伝わる話に比べると非常に長くなる傾向にある、ということがあります。これは怪異の姿や遭遇した場面が詳細に語られるなど、描写が詳細になったほか、怪異たちにその過去が設定されるものも多くあるからでしょう。怪異の背景に特定の地域や人々に古くから伝わっていた、という要素が加えられるのです。

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 これは一般に前近代的なものとしてイメージされる妖怪的な性質が追加されることで、もしかしたらそんな存在があるのかもしれない、という説得力が生まれることを狙ったのかもしれません。

 江戸時代に作られたとされる「コトリバコ」、ある地域に封じられ、子どもや若者を犠牲にし続けていたと語られる「八尺様」などが顕著な例でしょう。これはコピー&ペーストにより、長い話でも簡単に他の場所に転載できる、というネットの特性に拠るところも大きいと思われます。