相手は男性がほとんどで、女性議員が返信をしなくても、数カ月や数年単位で送り続けてくることもある。メッセージ内容に悪意がなくても、見知らぬ男性から継続的にメッセージが送られてくる状況に、精神的苦痛を訴える人は少なくない。
これらのケースの背景には、「かまって欲しい、自分の話を聞いて欲しい」という欲求が見えてくる。議員は「市民の声を聞く」ことが仕事とされる職業だが、女性議員に集中してこういったメッセージが送られる背景には、「女性だったら話を聞いてくれるだろう」という期待があるのではないだろうか。
被害者議員がハラスメントに声をあげない理由
ハラスメントを受けても声をあげない理由は複数あるが、議員に特有なのは公人だからという意識である。立場上、誹謗中傷やハラスメント被害を受けることはしようがない、我慢しろと言われたりすることが多く、議員本人もそう思いがちである。また、議会の中での自身の立場を考えたり、怒りを表すことは議員としてマイナス評価にがると考えたり、二次被害が怖いという人もいる。
しかし、ハラスメントを女性が政治参画するために払わざるを得ないコストとして捉え続ける状況は、なり手が増えないばかりか、当選しても複数期を重ねることなくやめてしまう可能性にも繋がる。
「この仕事はやりがいはあるけど…」と言わせないために
令和3年6月に施行された改正候補者男女均等法には、党や国、自治体などに対して、セクハラやマタハラの防止に努めるよう求めることが含まれたが、議会におけるハラスメント対策は、やっとスタート地点に立ったばかりだ。現状は被害にあっても相談する場所がほぼない。議員向け研修や、ハラスメント防止のための倫理規定等の整備など、これから取り組むべきことはたくさんある。
「この仕事はやりがいはあるけど、犠牲にするものが多すぎて他の女性にすすめられない」と多くの女性議員から聞いてきたが、そう言わせないような労働環境を整備することが、女性議員を増やすために必要不可欠だと考える。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。