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すぐ真横をクルマが爆走…“日本初”レベルの高速道路「大リニューアル工事」の現場には何がある?

中国自動車道リニューアル工事 #2

2021/12/28

genre : ニュース, 社会,

 現在、阪神圏の中国自動車道で進められているリニューアル工事。開通から半世紀が過ぎ、老朽化が進んでいる区間も多く、補修ではなく抜本的な更新工事が必要だということで始められた工事だ。

 吹田JCT~中国池田IC間は約1ヶ月半にわたる全面通行止めを来年度にかけて実に6回。中国池田IC~宝塚IC間は通年6車線から4車線への車線規制を2024年度まで。阪神間を結ぶ大動脈でこれほどまでの大規模な交通規制が行われるのは、もちろん初めてのことだ。

「築50年」を迎える日本の高速道路では“前代未聞級”の大リニューアル工事が行われている。その現場で見たものとは…… ©鼠入昌史

 そこで気になるのは、いったいどのような工事をしているのか、ということだ。NEXCO西日本でこのリニューアル工事を担当する阪神改築事務所所長の大原和章さんの案内で、実際の工事現場を見ることができた。

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モノレール高架のすぐ横にクレーン!

通行止め区間に入り、いざ最初の現場へ ©文藝春秋
今回訪れた工事周辺の地図がこちら。吹田JCT~中国池田ICにかけては「太陽の塔」で知られる万博記念公園の横を抜け、まさに大阪北部、北摂は千里ニュータウンのど真ん中をぶち抜いている

 最初に案内されたのは、大阪モノレール柴原阪大前駅のすぐ近く。大阪モノレールはほぼ一貫して中国道と並行しており、リニューアル工事の現場となっている吹田JCT~中国池田ICにかけてはまさに大阪北部、北摂は千里ニュータウンのど真ん中。

 そこをモノレールと中国道、そして“下道”である大阪中央環状線が仲良く並んで走っている、というわけだ。

大阪モノレール「柴原阪大前」周辺の区間は中国自動車道、“下道”大阪中央環状線と並行して走っている ©鼠入昌史

「この区間では、終日通行止め規制を行って宮の前高架橋・蛍ヶ池高架橋・豊中高架橋での老朽化した床版(路面の下の部分)の取り替えを実施しています。要するに、道路表面や橋そのものを『総とっかえ』しているわけです。

 隣接してモノレールが通っている中での工事ですので、とうぜんモノレールの運行に影響がでないように細心の注意を払っての施工になりますね」(大原さん)

隣接してモノレールが通っている中での工事が続く現場 ©鼠入昌史
モノレール駅の「すぐ横」にクレーンが! ©鼠入昌史
文字通り「すぐ目の前」をモノレールが通過していく状態 ©文藝春秋

架け替え方法は大きく2つ…片方は“日本で初”の挑戦

大きく2種類の方法で架け替えが進められている。ジャッキアップ工法がこうした工事で採用されるのは初のことだという(NEXCO西日本工事パンフレットより)
クレーン架設の様子(NEXCO西日本提供)

 具体的な高架橋の架け替えは、2つの方法で行われているという。ひとつはクレーンベント架設。わかりやすくいえば、高速道路上にクレーン車を設置して既設の床版と桁(橋桁)を撤去し、新しい床版と桁を架設するというものだ。

もうひとつがジャッキアップ架設。この状態から…(NEXCO西日本提供)
せり上がってくる!(NEXCO西日本提供)

 もうひとつはジャッキアップ架設と呼ばれる工法で、あらかじめ高架下で新しい床版と桁を組み立てておき、通行止め期間を利用してクレーン車で既設の床版と桁を撤去。下で用意しておいた新しいものを高架下からジャッキアップして架設する方法だ。高架下で河川や道路などと交差しておらず、作業スペースを充分確保できる場所において採用できる工法だという。